IP創造からモバイル展開まで重層的な収益構造を生んだコーエーテクモHD 2020年3月期は最高業績を達成 中長期目線の取り組みも光る


 
コーエーテクモホールディングス<3635>は、先日(4月27日)、2020年3月通期の連結決算を発表するとともに、決算説明の動画をIRページ上(youtubeでも視聴可能)で公開した。売上高だけでなく、営業利益、経常利益、最終利益がいずれもコーエーとテクモの経営統合以来の最高業績を記録するなど、非常に好調な決算であった。高利益率のモバイルゲームが引き続き売上と利益面でけん引しただけでなく、主力のパッケージソフトも大型タイトルが好調だった。

発表した決算は、売上高が前の期比9.4%増の426億4500万円と初の400億円を突破した。営業利益は同16.6%増の141億0200万円となった。開発体制の拡充に伴い、固定費が増えたものの、利益率の高い『三国志・戦略版』のロイヤリティ収益が伸び、営業利益率も過去最高を更新。また、有価証券売却益や賃貸用不動産の一部売却益もあり、最終利益も同11.8%増の153億0600万円と過去最高を更新した。
 


主力のパッケージゲームは、『仁王2』を全世界で3月に発売し、好調なスタートを切った。前作『仁王』もこの期だけでリピード販売が58万本と伸び、累計300万本を突破した。『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントムストライカーズ』(開発担当)が発売されたほか、『三國志14』が26万本、『無双OROCHI3 Ultimate』が25万本を販売するなど年間を通じてヒット作が生まれた。パッケージの販売本数は82.7%増の1056万本(うちDL417万本)を記録した。
 


モバイルゲームは、『三国志ヒーローズ』を3月にリリースし、IP許諾したスマホゲーム 『三国志・戦略版』が中国本土のApp Storeセールスランキングで上位に入るなど大ヒットを記録した。そのロイヤリティ収益は、同社のオンライン・モバイル分野の成長をけん引しただけでなく、会社全体の収益を押し上げた。同社が開発を担当する『星のドラゴンクエスト』海外版もリリースされた。
 


続いて売上の大半を稼ぐゲーム事業の売上の内訳をみていこう。主力のパッケージソフト(家庭用ゲームソフト)の売上が3.0%増の234億0600万円だった。その内訳は大きく変わっており、パッケージ製品の売上が13%低下する一方、ダウンロード販売39%増、ダウンロードコンテンツ35%増と大きく伸びた。また、モバイルゲームについても42.4%増の128億円と大幅増となった。その多くが高採算のロイヤリティ収益だ。
 


売上を大きく伸ばす一方で、人員採用を行うなど開発体制の拡充など、先を見据えた投資も並行して行っている。新卒採用などを強化したことで、期末の従業員数は78人増の1835人となった。同社の従業員数の推移を見たものが以下のグラフとなる。2015年3月期においては1497人だったが、徐々に増加していることが確認できる。
 


今回の好調な決算は、同社ならではのビジネス展開の賜物と言えるものだ。自社で企画・開発した家庭用ゲームソフトがヒットし、それがシリーズ展開されていくと、ひとつの「IP」となる。そして、そのIPを自社のモバイルゲームとして開発するだけでなく、海外の有力ゲーム会社にライセンス供与してヒットすることで、高利益率のロイヤリティ収益を生む、という重層的な展開を生み出している。

新規IP『仁王』の成功と創造、そして、従業員の積極採用や横浜みなとみらいへの開発スタジオの移転など先行投資も積極的に行うなど、中長期の成長を見据えた経営施策が光っている。新型コロナウイルスの影響で今期(2021年3月期)の業績見通しに不透明さは残るものの、世界のゲーム業界でコーエーテクモグループのポジションは今後一段と高まっていきそうだ。


 
(編集部 木村英彦)
コーエーテクモホールディングス株式会社
http://www.koeitecmo.co.jp/

会社情報

会社名
コーエーテクモホールディングス株式会社
設立
2009年4月
代表者
代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
決算期
3月
直近業績
売上高784億1700万円、・営業利益391億3300万円、経常利益398億9900万円、最終利益309億3500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3635
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