【Sp!cemartゲームアプリ調査隊】好調なリスタートを切った『魔界戦記ディスガイアRPG』、リリース中断から再開までの8ヵ月間の動向を分析


スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。ゲームアプリの運用情報をいつでもウォッチできる「Sp!cemartカレンダー」や、毎月発行しているレポートを提供している。
 

なかでもカレンダーは、セールスランキング上位のモバイルオンラインゲームのゲームシステム・運用施策をダッシュボード形式のWEBツールとして提供。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関関係を時系列で分析できる。
 
本連載記事ではSp!cemart協力のもと、カレンダー機能を用いた、ランキング上位タイトルの直近のゲーム内施策を分析。今回はフォワードワークスの新作
『魔界戦記ディスガイアRPG(以下、ディスガイアRPG)』をピックアップする。
 

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(以下、Sp!cemartゲームアプリ調査隊より) 
 

■リリース中断から再開までの8ヶ月の露出動向

 

 
■『魔界戦記ディスガイアRPG』
提供:フォワードワークス/日本一ソフトウェア
リリース日:2019年11月27日

 
本作は、家庭用で人気を博したシミュレーションRPG『魔界戦記ディスガイア(以下、ディスガイア)』シリーズのスマートフォン向けタイトル。歴代キャラクターたちが登場するオリジナルストーリーや、本シリーズならではのやり込み要素を踏襲しています。
 
そもそも『ディスガイア』は、2003年にプレイステーション2用ソフトとして発売されたシミュレーションRPGです。シリーズ当初から爆発的なヒットではありませんでしたが、コミカルなキャラクターと世界観、そしてやり込み要素の豊富さが話題を呼び、口コミによって人気シリーズまでに成長しました。
 
なかでもやり込み要素に関しては、キャラクターレベルが9999まで上がるほか、億単位(それ以上も)の超ダメージが飛び出すなど、テレビゲーム史上類を見ないスケールを誇ります。ナンバリングタイトルは5作までにのぼり、シリーズ累計出荷本数は全世界で300万本を突破しています(2017年5月発表時点)。
 
今回のスマホ版に関しては、人気IPタイトルゆえ、シリーズファンに訴求するのではないかと、リリース前から期待されていました。ですが、2019年3月に一度リリースしたものの、インフラとアプリケーションそれぞれに大きな改修とテストが必要と判断し、新規インストールの一時中断を実施しました。
 
そして、実に8ヵ月間の改修を行い2019年11月27日にリスタートを切りました。
 
オンラインゲームは、アクセス負荷によるサーバダウンや、アプリに関する不具合など、つねにさまざまな問題に直面します。本作だけに限らず、最近では新作タイトル『ラブプラスEVERY』のサービス開始中断(関連記事)や、絶賛運営中のタイトルでも長期メンテナンスが余儀なくされることも多々あります。
 
ここで企業側が失うものは、売上もそうですが、一番はユーザーからの信用です。
 
『ディスガイアRPG』のリリース中断から再開までの8ヵ月間、企業側としてはアプリの改修だけではなく、ユーザーからの信用を取り戻すための露出施策も同時に講じていたのではないでしょうか。そこで、まず本稿では『ディスガイアRPG』のリリース中断から再開までの8ヵ月間の露出動向についてまとめていきたいと思います。
 
【リリース中断から再開までの流れ】
■ 2019年3月19日にリリース
■同年3月20日~4月11日までメンテナンス告知と再開を繰り返す
■同年4月12日に「3ヵ月以上の時間が必要」と発表。新規DLを停止
■同年5月31日に2019年秋に再開することを発表
■同年7月29日に2019年11月に再開することを発表
■同年8月21日より公式Twitterで一部ストーリーを公開(ゲーム紹介を再開)
■同年9月9日に公式Twitterで11月サービス開始に向けた具体的なスケジュールを公開
■同年9月12日に公式TwitterでSNSキャンペーンを展開
■同年10月11日に公式Twitterで10月11日までの作業完了を報告
■同年10月31日にAndroid向け接続テストを実施
■同年11月12日に公式Twitterでサービス再開が11月下旬予定であることを発表
■同年11月27日に約8ヵ月ぶりのサービス再開

 
上記が主にリリース中断から再開までに実施した『ディスガイアRPG』に関するアクションです。夏頃を目途に改修のゴールが見えて、情報発信が再開されたのがうかがえます。
 
なかでも最もシビアに伝えているのは、サービス再開に関する発表です。具体的な再開時期が分かると、3ヵ月以上から秋、秋から11月、11月から11月下旬と、より詳細な日程を逐次発表するように進めています。驚くべきは、作業完了に関する報告もスケジュール表と共に公開する徹底ぶり。下記のスケジュール表には、デバッグ対応や内部負荷検証実施など、社内向けの資料(のようなもの)をそのままユーザーに伝えています。
 
 
こうした対応は、2019年3月20日~4月11日にメンテナンス告知と再開を繰り返していた時期の、反省と改善の表れだと感じています。『ディスガイアRPG』の初期は、サーバダウンやアプリの不具合はもとより、サービス再開時期の不透明さや度重なるメンテナンス終了の“延期”など、ユーザー側の不信感が積もったことが大きな問題です。
 
「緊急メンテナンスは明日完了する」「3月中のサービス再開目処に変更はない」など、予定を何度も設定したことにより、ユーザー側の期待と(予定が守られなかったときの)落胆が乱高下する形になりました。こうした反省点があったからこそ、サービス再開の告知に関してもシビアに対応したものだと考えています。
 
続いて、プロモーション施策についても見てみましょう。
 
【リリース再開までに実施したプロモ施策】
■「Coke ON ドリンクチケット」が当たるSNS施策(2019年9月12日~18日)
■ ミニゲーム「9兆9999億ダメージで100万円山分け」(2019年10月8日~15日)
■ 公式Twitterフォロー&最新PVリツイートでギフトコード贈呈(2019年11月19日~25日)

 
2019年9月12日より、本格的にSNSを中心にプロモーション施策を展開していきました。ユニークな試みとしては、スマホ・タブレット専用コンテンツ(ミニゲーム)「9兆9999億ダメージで100万円山分け」キャンペーンでしょう。
 
 
これは本シリーズの桁違いな攻撃ダメージにちなんで、 0.0001秒で攻撃力が1億上がるストップウォッチを9.9999秒でストップし、 ダメージ9兆9999億を繰り出して「超魔王バール」を打ち倒すWEB用のミニゲームです。見事、「超魔王バール」を倒した方には、 100万円分の商品券がプレゼントされました。なお、成功者が複数出た際は、抽選で最大10名に等分(一人当たり10万円分の商品券)。
 
成否にかかわらず、ミニゲーム終了後は結果をシェアするような導線を設けて、情報の拡散にも努めていました。なお、成功者は複数出たようで商品券は等分されたようです。このほか、SNSキャンペーンの定番施策であるギフトカードプレゼントの“フォロー&リツイート”では、1.6万リツイートを記録。
 
こうした施策が功を奏してか、再開後には無料ダウンロードランキングで2位を記録しました。なお、2019年3月19日リリース時点でダウンロードした方はアップデートするだけで済むため、今回のランキング上昇はすでにアンインストールしたユーザーが再び戻ってきたほか、新作タイトルとして認知され、新規ユーザーにも訴求されたことがうかがえます。
 
ここからは、『ディスガイアRPG』のマネタイズやゲーム概要はもとより、直近におけるランキング推移と施策について、「Sp!cemartカレンダー」で覗いてみましょう。
 

■リリース当初から大盤振る舞いなプレゼント内容

 

本作のゲーム内容は上記のPVを見ていただくとして、ここではマネタイズについて言及していきます。主なマネタイズは、有償アイテムの魔晶石の販売です。魔晶石はガチャや特定アイテムの購入などに使用します。魔晶石のラインナップは以下の通り。
 
【魔晶石のラインナップ】
・魔晶石48個(120円)
・魔晶石220個<有償196+無償24>(490円)
・魔晶石440個<有償392+無償48>(980円)
・魔晶石830個<有償736+無償94>(1,840円)
・魔晶石1585個<有償1320+無償265>(3,300円)
・魔晶石2355個<有償1960+無償395>(4,900円)
・魔晶石5200個<有償4000+無償1200>(10,000円)

 
ガチャからは、バトルに参加できるユニットが排出され、1回で魔晶石150個(375円相当)、10連が1500個(3,750円相当)必要です。なお、1日1回限定で無料で引くこともできます。排出率は、最高レアリティの★4が3.00%、★3が17.00%、★2が80.00%。
 
『ディスガイアRPG』【調査期間:2019年11月26日~12月15日】

 
Sp!cemartカレンダーでは、リリースから現在までのランキング推移として、2019年11月26日(火)~12月15日(日)を抜粋しました。ランキング推移は、先ほど言及した無料ダウンロードはもとより、セールスランキングでも最高11位を記録するなど、好調に推移しています。カレンダー上では、“リリースのタイミングにどのような施策を展開していたのか”にフォーカスをあてていきます。
 
【リリース直後の主な施策】
感謝のプレゼント(12月26日13:00まで)
事前登録者数突破記念(12月26日13:00まで)
インストール特典(終了日未定)
★4確定プレミアム召喚(12月13日13:00まで)
★4確定ディスガイアシリーズ召喚(12月13日13:00まで)
ショップにおける各種セット商品の販売

 
ポイントは、上から3つのプレゼント施策です。それぞれ下記のような内容をプレゼントしていました。
 
【感謝のプレゼント】
1.魔晶石5,000個
2.毎日エトナキャンペーン(5日間ログイン合計数)
・魔晶石7,500個
・キャラクター「★4エトナ」4体
・キャラクター「★4プリニー」5体
 
【事前登録者数突破記念】
1.キャラクター「★4堕天使フロン」1体
2.ゲーム内武器「グロウソード」1個
3.ゲーム内武器「スクスクの卵殻」1個
 
【インストール特典】
・魔晶石1,500個

 
 
内容には、人気キャラクターのエトナとフロン(それぞれ最高レアリティ★4)のほか、魔晶石14000個(35,000円相当)をプレゼントしたのだから驚きです。もちろん無償の魔晶石ですが、ガチャ約90連分にも相当し、ほかのタイトルがリリース時点で配布する量ではありません。プレゼント内容の背景には、恐らくリリース記念だけではなく、お待たせしてしまったお詫び、いわゆる“詫び石”の姿勢も表れているのでしょう。
 
とはいえ、セールスランキングで垂直立ち上がりを見せたのは、ショップにおける各種セット商品の販売です。いわゆるスタートダッシュを目的として、継続を考えるユーザーが購入することからランキング上昇の起爆剤となります。実際にショップでは、★3や★4キャラクター確定の召喚チケットなどがセットになった「スタートダッシュパック」・「初心者応援パック」などを販売していました。
 
 
そのほか、ランキングが上昇している12月5日、12月13日には、ガチャにおいて新キャラクターが登場。約1週間のペースで新キャラクターが登場したこともあり、現在もTOP50を安定して維持しています。
 

■ジャンルは違えどユーザーからの評価も高い

 
見事なリスタートを切った本作ですが、ゲーム内容としては従来シリーズと比較してジャンルが大きく異なります。というのも、これまでのシリーズはシミュレーションRPGでしたが、本作ではシンプルなコマンドバトル形式を採用しています。ステータスのスピードが早い順に行動でき、攻撃(スキル)を選択して進行するものです。
 
ユニットの移動や位置関係からなるシミュレーションRPG特有の戦略性はありませんが、パーティー編成の妙や自動進行の設定など、スマホ独自の遊び方でシリーズの醍醐味である「やり込み要素」と「戦略性」を再現していました。バトルの形式は違えど、ユーザーからの評価はアプリストアにも表れています。
 

▲App Store『ディスガイアRPG』のページ(2019年12月16日現在)
 
個人的には、『ディスガイア』シリーズならではのギャグセンスとドタバタ劇がきちんと踏襲されているほか、過去シリーズを追体験できるモードが搭載されていた点が◎。
 

▲初代『魔界戦記ディスガイア』のワンシーン。
イラストや音楽、台詞も当時のまま(ただ、台詞は全文ではなく一部。ボイスもフルではない)。
 
オンラインゲームは立ち上がりが重要、一度失ったユーザーを再び振り向かせるのは容易なことではありません。しかし、本作に関しては、きちんと改修し、かつ真摯な対応(再開までの露出を含める)がユーザーに届いたことで、結果に結びつきました。
 
ユーザーからすれば面倒なことでしたが、ゲーム業界に身を置く人間としては『ディスガイアRPG』の中断から再開までの一連の流れから学ぶこともあったのではないかと思います。
 
「Sp!cemartカレンダー」では、各ゲームのイベント情報をランキング推移と共に閲覧できます。自社はもとより、競合他社の施策一覧を取りまとめた分析などにもご活用できます。ぜひ、ご興味がある方はお問い合わせページからご連絡ください。
 

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■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「Sp!cemart」というサービス名称で各種ソリューションを提供。

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■Sp!cemartゲームアプリ調査隊 バックナンバー

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Vol.5 流入から定着まで繋げた7つの施策…大ヒット中の『FFBE 幻影戦争』、事前登録からリリース直後の施策を総まとめ

Vol.6 事前プロモ(ほぼ)なし…突如配信された『ワールドフリッパー』ヒットの背景。リリース前後の施策を分析

Vol.7 運営7周年を迎えた長期運営タイトル『にゃんこ大戦争』…長く愛される理由をゲーム“内外”の施策から分析


 

 
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2015年7月
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