【CEDEC+KYUSHU2019】ネクソン、韓国『カートライダー』の運用14年目における人気再急上昇の秘訣をレポート

ネクソン<3659>は、11月23日に開催された「CEDEC+KYUSHU 2019」にて、韓国で大成功を収めているカートレーシングゲーム『カートライダー』のPM(プロジェクトマネージャー)、キム・ドンヒョン氏が『カートライダー』成功の秘訣について講演を実施。本稿では、同社より当日のレポートが到着したので以下にてお届けしていく。
 
 

<以下、公式レポートをそのまま掲載>
 
カートライダーは韓国でサービス中のカートレーシングゲームあり、韓国内カートレーシングゲームシェア99%を占めているジャンル1位のゲームである。e-Sportsとして「カートライダー・リーグ」が開催されており、現在多くのユーザーがプレイを楽しんでいる。2004年の配信開始直後は売上好調だったものの、売上が落ち厳しい状況に陥るが、配信14年目である2018年の下半期から人気が再急上昇した。すると、「どうして再び人気が上がったのか?」という問い合わせが多くなり今回発表するに至ったという。
 
『カートライダー』のPM業務
キム氏は、『カートライダー』のPM業務は、データ分析、企画立案、企画を実行に向けて関係部署との調整からプレイヤーの対応までのすべてを一貫して行う幅広い業務内容であることを話した。また、プレイヤーとも最も親密な存在である一方でサービスでは第一線においてすべてのことを管理するため、開発チームとプレイヤーの間に立つ仲介者の役割を果たしているそうだ。


 
では、そんな『カートライダー』は2018年からどのように成長を見せているのか?


 
導入初期は、絶大な人気を誇り、ネットカフェプレイランキング1位から国民的ゲームという称号がつくまで人気を集めるものの、以後急激に下落し2018年の上半期まで暗黒期となった。ゲーム市場の変化や大型アップデートの失敗が重なりキム氏が『カートライダー』のチームに移った際には「カートライダーはまだサービスしているの?」と周りからも言われていたそうだ。
 
プレイヤーからは、「難しい」「昔からプレイしているユーザーと、新規ユーザーとの実力差が大きすぎる」といった否定的な単語が聞こえ、「本当に回復できるのか?」と周りにも言われていたが、『カートライダー』チームは諦めなかったとキム氏は話した。
 
成長のカギ#1 自分たちのゲームを知る
そこで、キム氏は自分たちのゲームを正確に把握するため、強み、弱み、機会、脅威の4つを組み合わせて判断するSWOT分析を行った。
 
強みとしては、「認知度」「ゲームのアプローチのしやすさ」が挙げられた。まず『カートライダー』の認知度は、全盛期の影響もあり十分にある。かつ前方向のキーを押せば前に進む簡単なキー操作、またゲームの特性上ネットワーク環境負荷が大きくかかることがないのでゲームのアプローチがしやすい。
一方最大の弱みは「プレイヤーの認識」である。韓国のネットカフェで『カートライダー』を遊ぶのは恥ずかしいという認識がもたれていたことが、コミュニティを調べることで発覚したそうだ。
そして、機会として「韓国ゲーム市場の状況」を取り上げた。『カートライダー』のようなジャンルのゲームはランキングの上位になかったため、運用次第でチャンスがあると認識した。
キム氏は、2018年上半期にこのSO戦略(強みを機会で活かす) + WO(弱点を機会で活かす)戦略を駆使し、「オリジリティ」を重視したアップデートをすることで再び同年下半期の水準まで伸ばしていくことを決めた。

 
さらに、キム氏は長年蓄積してきたデータに基づきユーザー分析を行ったところ、プレイヤー数は多いが、毎日接続するようなプレイヤーは10%未満、またプレイタイムも過半数が30分未満と非常に短いことが分かった。そして、主にプレイヤーが「リーグ・オブ・レジェンド」や「PUBG」などをプレイしていて、それらの緊急メンテナンス中に『カートライダー』の同時接続者数が15~20%上昇することもわかった。
この結果から、キム氏は、『カートライダー』は目的を持って長い時間を使ってプレイするRPGやFPSなどのメインゲームとは違い、目的性が低く、簡単にアプローチができ短い時間でプレイができる「セカンドゲーム」であると考えたそうだ。つまり、『カートライダー』をセカンドゲームとして楽しんでもらうようにサービス環境を構築することにしたそうだ。
そこで『カートライダー』はPCで遊ぶゲームだが、「モバイルゲームのようなアップデートを行う」ことを企画コンセプトに設定した。

 
成長のカギ#2パッチ


『カートライダー』のプレイヤーの立場なって本当に面白く必要なパッチだけを制作し、さらにパッチを簡素化して問題があれば即時に対応する。そして多様なコンテンツをイベントで活用することを行った。実際にキム氏は、『カートライダー』を1日6時間以上プレイすることで、面白いと思っていたことが実はそうじゃないということが分かったそうだ。プレイヤーの気持ちになり、面白いと思うアイテムなど1つのトピックに絞り簡素化したパッチを毎週当て、既存プレイヤーが欲しいアイテムを提供するなどの取り組みを行った。コンテンツ面では、多数の販売コンテンツを持っていた。これら販売コンテンツの一部をイベントの報酬として獲得できるように変更した。プレイヤーとしては課金しなくても手に入るので、その楽しさに気づき次回の購入につながったそうだ。次第にプレイヤーからは「安くて面白い!」という印象を持ってもらえるようになったとキム氏は話す。


 
成長のカギ#3話題性
『カートライダー』をいったん離れてしまったプレイヤーにももう一度知ってもらうために、キム氏を含む『カートライダー』チームは3つの取り組みを行った。

① ホームページに誘導することでネットの検索順位を上げる
検索エンジンから『カートライダー』のホームページに入らないとニュースや情報にアクセスできないようにし、Webページで行うイベントを周期的に行ったそうだ。すると、ゲームとしての検索順位15位~20位だったのが、10位以内に入るようになった。
 
② ネットカフェで遊んでもらえるように戦略を立てた
キム氏は、他の人が遊んでいるのを見かけた人が影響されてプレイすることに着目し、ネットカフェで遊ぶともらえる報酬を3倍~5倍に増やした。すると、ネットカフェのプレイ順位も最近では5位まで上昇したそうだ。

③ ヘビーユーザーを中心とする報酬を強化
そして、報酬を今までの5倍強化することにした。収入が減ることが心配されるかもしれないが、キム氏はプレイヤーが増えれば増えるほど認知してもらえることにつながる大きな宣伝につながると考えた。また、ネットカフェでプレイしたユーザーにはより多くの報酬を与えることにしたそう。

 
成功のカギ#4 コミュニケーション
また、キム氏は『カートライダー』チームからプレイヤーへの一方的なコミュニケーションになりがちなところに着目した。
そこで、『カートライダー』のコミュニティをモニタリングし、改善点をパッチに反映。コミュニティでの意見を即時に反映することでしっかりとプレイヤーの意見が反映していることを示した。また、『カートライダー』のリーダーが出書きの手紙をユーザーに送り、ショーケースの機会を通じてユーザーと直接会話する機会も設けた。さらに、問題が発生した場合は30分以内に解決する対応を行った結果、『カートライダー』チームのリーダーチョ・ジェンユンはスーパーリーダーとして称えられ、イメージも上がっていった。
 

すると、韓国インターネット検索エンジンNAVER(ネイバー)のインターネット検索順位は、10位圏内に定着するようになった。そしてインフルエンサーの活躍で『カートライダー』が紹介されるようになり、2017年のユーザー数と比べ2018年は日間で8倍まで成長したそうだ。
また、ネットカフェでの順位も5位まで上昇。10年ぶりに「カートライダー・リーグ決勝戦」を開催し、観覧席のチケット1600席分が1分で完売した時には、キム氏は感極まって涙がこぼれたそうだ。


 
ネクソンでは、11月14日(木)(ロンドン時間)カートライダーシリーズ最新作『KartRider:Drift』の発表を行っている。今後の動きにも注目していきたい。
 
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
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