ケイブの経営戦略について 環境の変化に大胆に対応

 大証ヘラクレスに上場しているケイブという会社について考えたいと思います。僕はなにげにケイブ評論家的な存在かもしれません。大学の経営戦略でケースをレポートしなさいといわれたら、迷うことなく同社を取り上げるでしょう。  大証ヘラクレスに上場しているケイブ<3760>という会社をご存じだろうか。人によってイメージが全然違う会社である。業務用ゲームの会社という人もいれば、オンラインゲームの運営会社という人もいる。あるいは、モバイルコンテンツの配信会社と答える人もいる。全て正解だが、同社は、とにかく事業構成を短い期間で様変わりさせる会社であり、人によってイメージするものが大きく違ってくるのだ。  さて、同社は、2004年12月に上場した。私がかつて証券記者をしていた頃、同社の紹介記事を担当したのでよく覚えているが、上場当時の主力事業は、モバイルコンテンツの配信であった。東京フィルや米ハーフノート等と提携した着メロサイトや、ビーズアクセサリーのレシピコンテンツを配信したりしていた。ビーズアクセサリーは、。「リアルとモバイルの連動」を意識し、レシピの配信だけでなく、イーコマースやリアル店舗も運営していた。いわゆる差別化された、「こだわりの強いモバイルサイト」を運営する会社として華々しく上場したのだった。たしか、主幹事証券は、UFJつばさ証券だったと記憶している。 ケイブ社の業績推移(2011.5の数字は会社予想。単位:100万円)

ケイブ社のセグメント別売上高の推移(単位:100万円)

 上場後2年ほどはモバイルコンテンツとコマースを中心に順調に業績を拡大させていたのだが、主力のモバイルコンテンツが伸び悩む傾向を見せてくると、同社は、2006年7月、中期経営計画を策定し、PCオンラインゲームを事業の中心に据えると発表した(リリース)。当時、何を考えているのかと思ったものである。その第一弾が「真・女神転生IMAGINE」。2007年4月より正式サービスを開始したタイトルだが、サービス開始から9ヶ月ほどで月商1億円を達成するなど国産オンラインゲームとしては異例のヒット作となった(リリース)。その結果、2008年5月期の業績は、前年の赤字転落から一転して経常利益3億3900万円を計上し、翌期には過去最高益を更新した。  その後、2010年5月、同社は、再び事業ポートフォリオの大幅な見直しを行っている(リリース)。同社の看板タイトルであったオンラインゲーム「真・女神転生IMAGINE」の売上が伸び悩み、田宮模型「ミニ四駆」を題材としたオンラインゲームもサービス中止と特損計上を余儀なくされ、2010年5月期の経常利益が93%減となった。先のリリースの中で、同社は、不採算事業であったコマース事業と業務用ゲーム機事業から徹底する一方、オンラインゲームやモバイルコンテンツの収益性の改善、そして、ソーシャルゲームやアプリに経営資源を集中的に投下する、と発表した。  なお、この発表に先立ち、同社は、2010年より、「モバゲータウン」にて、ソーシャルゲーム「ミニ四駆チャンピオンシップ」(1月)と、「しろつく」(2月)の配信を開始していたが、会員数の増加ペースが非常に早く、収益性が高いと判断したためであろう(リリース)。その後も、順調に投入タイトルを増やし、GREE版「しろつく」(6月)、モバゲータウン「サムライリベンジ」(7月)や、iPhone用アプリ「怒首領蜂(「どどんぱち」と読む)」(8月)や、mixiアプリモバイル「おともだちフレンズ」(9月)などの配信を行っている。同社は、2011年5月期の経常利益5億7000万円を計画している。  このようにみていくと、ケイブ社の特徴は、インターネット業界やゲーム業界における流行の変化といった事業環境の変動に柔軟に、大胆に対処していることにある。収益にならないと判断すれば、たとえ投資を行っていたとしても特損を計上し、早期に撤退する一方、既存事業と親和性が高く、収益性が高いと判断するようであれば、一定のリスク管理を行った上で、新規事業に積極的に乗り出していく姿勢がみられる。市場の変化を読むことは非常に難しく、ある種の嗅覚のようなものが必要だが、それも高野社長によるところなのだろう。ディー・エヌ・エー<2432>ともまた違った柔軟性の持ち主だと感じる。成功体験に過度に依存せず、その本質をつかんでいるのだろう(よくしらんけど)。  同社は、10月13日に第1四半期決算を発表する予定。今回の大胆なポートフォリオの変更がどういった結果となってくるのか、大いに注目される。