【レビュー】コロプラの最新作『最果てのバベル』はソロ専用RPGの追い風になれるか?…β版からヒットの可能性を検証する

 
スマートフォンが誕生して早12年。近頃、スマートフォンゲーム業界では、売り上げ上位タイトルの定住化やヒット作を生み出す難しさ、規模の拡大から、増々のレッドオーシャン化が叫ばれている。もはや、コンシューマーゲームと比べても遜色ない工数・資金をかけて作られるハイクオリティなゲームが当たり前となりつつある中、昨今、目覚ましい活躍を見せているのが『PUBG MOBILE』や『荒野行動』に見られるバトルロイヤル系のゲームと、フレンドやギルドなど、いわゆるソーシャル要素を廃した”ソロ専用RPG”の普及だろう。
 
特にソロ専用ゲームは、2017年4月に配信が開始された『アナザーエデン 時空を超える猫』のヒットを皮切りに、各社から次々と新作が発表されている。最近では、Nintendo Switch向けタイトルとして人気を博した『オクトパストラベラー』の数年前の世界を描いた『オクトパストラベラー 大陸の覇者』がアプリで先行体験を開始したことが大きな話題となっている。
 
今回、ご紹介する『最果てのバベル』もまた、そんなソロ専用RPGの流れを汲む注目作のひとつである。
 

アクションゲームの雄「コロプラ」が魅せる新境地

 
『最果てのバベル』は、2018年11月に制作が発表された、コロプラ<3668>のスマートフォン向け新作RPGである。本稿では、本作のβ版を一足先に体験する機会を設けていただけたので、そこから判明した新たな事実やプレイ感などをお届けしていく。
 
そもそも、コロプラといえば『白猫プロジェクト』や『バトルガール ハイスクール』のヒットを始め、直近のリリースタイトルを見ても『アリス・ギア・アイギス』や『バクレツモンスター』など、アクションゲームのイメージが強いことから、新作が「RPG」ということに驚いた方も多いのではないだろうか。
 
本作のコンセプトは、「RPGで育ったキミへ最高の冒険を」。これを実現するため、開発には『ファイナルファンタジー』シリーズの『VII』、『VIII』、『X』、『X-2』、『XIII』、『XV』や、『ドラゴンズドグマ オンライン』のシナリオを手掛けたことで知られるシナリオライターの野島一成氏(ステラヴィスタ)や、『伝説のオウガバトル』、『戦場のヴァルキュリア』シリーズ、『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』の作曲家である崎元仁氏(ベイシスケイプ)といった著名クリエイターを起用している。
 
【ストーリー】
巨大な塔『バベル』。
文明を失いかけた人間たちが住む街、それは静かに死に向かう街でもあった。
 
街は広大な森に囲まれ、森は高い岩壁に囲まれていた。
誰も壁の外のことを知らなかった。
誰も壁の外に行けるとは考えていなかった。
彼を、のぞいては。
 
17歳の少年ライ。
彼は隔離された自分の部屋から、一度も外に出たことがない。
いつか自由を手に入れ、外の世界を知りたい。そう願い、暮らしていた。
少年の願いは、いつもの街を襲う異変をきっかけに、叶うこととなる。
 
 
塔紀1119年――
 
少年は鳥籠の中の少女と出会う。
その出会いは彼に世界を翔ける翼を与える。
 
そして二人は、それぞれの運命にむかって羽ばたき始める。

『最果てのバベル』プロモーションムービー
 

グラフィック&音楽が冒頭から心打たれるクオリティに

 

▲タイトル画面で流れているのは、上記のプロモーションムービーでも聴ける本作のメインテーマだ。優雅なピアノの戦慄を始め、オーケストラサウンドが壮大な世界を彷彿とさせる。
 
ゲームを始めてまず目を惹かれたのはビジュアル表現の豊かさだ。ゲームは基本、3Dのミニキャラを操作するのだが、探索からバトルまでキャラの一挙一動が細かく描かれており、ここに『白猫プロジェクト』や『バトルガール ハイスクール』などで培った同社の3Dグラフィックに関する知見が存分に活かされているように感じた。
 

▲2Dマップを探索しながら物語を進めていく。目的地はマップにマークが記されているほか、通路からは奥や手前にも移動できるため見た目以上にフィールドは広大になっている。
 
また、会話シーンやステータス画面では2Dグラフィックで描かれたキャラを見ることが可能。活発な性格の主人公「ライ」を筆頭に、謎めいたヒロインの「マイリージャ」や、友人として登場する「ポッケ」、「イタク」など魅力的なキャラが多いのが特徴となっている。この世界では、人々は”バベル”と呼ばれる塔に身を寄せ合って暮らしている。ネタバレを避けるため物語の詳細については触れられないが、街で度々発生している「停電」や、ライの置かれている境遇など、真相が気になるところが多い。
 


▲野島氏がスマホ向けタイトルで物語を本格的に執筆するのは初となるため、どのような物語に仕上がっているかにも注目だ。また、スマホゲームには珍しく配信前からエンディングがあることが謳われている。
 
ちなみに、筆者が本作で最初に”目を惹かれた”のはグラフィックだったが、この時点で”耳”は既に崎元氏の楽曲の虜になっていた。序盤に登場する街や森では、心が落ち着く、ゆったりとした曲が用意されている一方で、のっけからシリアスなシーンも多いため、曲調の変化で物語全体がグッと引き締まる。
 

▲記事では音を伝えられないのが非常に残念なところだが、実際にプレイする際は是非、サウンドをON、もしくはイヤホンなどを使用して音楽を聴きながら楽しんでいただきたい。
 

◆HP・SP管理から見る戦略性の高いバトルシステム

 
ここからは、RPGの肝となるバトルシステムについても紹介していく。
 
敵との戦闘はコマンド選択方式のターン制となっている。コマンドの種類は、通常攻撃と防御を全キャラ共通で使用できるほか、各キャラに備わったジョブごとに様々な種類の「アクションスキル」が用意されている。キャラごとのジョブは変更可能となっており、何をセットするかによっても使用できるスキルが変わるが、この点については後述の育成面と合わせて紹介する。
 

▲バトルはランダムエンカウントになっているため、フィールドを移動していると戦闘になる。敵をタップすることで特定の相手をターゲットすることが可能だ。そのほか、キャラの部分を長押しすることで敵味方の状態を確認できる。
 


▲細かいところではあるが、通路で交戦する際や、強力なボスとのバトルではカメラアングルが変わる。ユーザーの気持ちが昂るシーンに合わせて、より迫力のある演出でバトルを楽しめるなど、作り手のこだわりを感じる。
 
アクションスキルを使用するには、キャラアイコンをタップすればOK。使用には「SP」を消費するが、全体攻撃や回復など、状況に合わせた選択が重要になってくる。また、実際にプレイをしてみて、本作では長期目線でのHP・SPの管理が非常に重要になると感じた。理由として、本作ではキャラのHPやSPを全回復させてくれる「回復装置」というものが各所に置かれているのだが、使用できる量が無制限ではないからである。回復装置は使用する度に残量が減っていき、時間経過で回復するものの、すぐに使用したいときは「精霊石(有償アイテム)」を使用する必要がある。
 

▲精霊石を消費するのはなるべく抑えたいところ。そのため、ボス戦前に回復できる量を温存しつつ、普段は回復効果のあるアクションスキルを使いながら効率良くバトルを進めていくことが大事だ。
 

▲また、本作ではフィールド上で「回復ボタン」を押すことでHPを回復することができる。ただし、SPを10%消費してHPを20%回復とあまり効率は良くない。いざという時の手段と考えておいた方が良さそうだ。
 
この回復装置のシステムは、一見するとストレスが発生する要素にもなりかねないが、1バトルを切り離して見るのではなく、長い目で見たときの”冒険”を管理する必要があるため、RPGとして1ランク上の歯ごたえが生まれる。ひとつ安心していただきたいのは、フィールドから街へ瞬時に移動する「飛翔」という手段も用意されているため、危なくなったら一旦、態勢を立て直すことも可能になっているということだ。これで、ゲームに慣れていない方も、コツコツと進めることで自身の成長が感じられる、まさにRPGの醍醐味を感じられる部分にも直結している。
 

◆追い打ちによる大ダメージが爽快!

 
さて、コマンド選択式のターン制RPGというだけでは、日々多くのタイトルがリリースされているスマートフォンゲーム業界で生き残っていくのは正直難しい。そこで、『最果てのバベル』ならではの要素として取り入れられているのが「ブレイク&ダウン」だ。
 
敵を攻撃することで溜まっていく「ブレイクゲージ」は、MAXになることで敵の状態が変化していく。第一段階では与えるダメージが通常の2倍になるブレイク状態に、第二段階では与えるダメージが通常の3倍、さらに敵はしばらく行動できなくなるダウン状態へと移行する。ブレイクゲージは武器や攻撃方法によっても溜まるスピードが異なるため、長期戦になるほど単純なダメージだけでなく、如何にブレイクゲージを溜めるかが勝利へのカギとなる。
 

▲敵のHPゲージの左側に表示されているのが「ブレイクゲージ」だ。
 

▲ダウン状態に合わせて敵の弱点となる攻撃を叩き込めると非常に爽快。最初は少しずつしかHPを減らせず「本当に勝てるのか!?」と不安になった相手でも一気に形勢を逆転できる。
 
そのほか、バトルシステムからもうひとつの特徴でもある「陣形」についても紹介しておこう。まず、陣形そのものに特性としてパーティ全員の「物理攻撃力○%アップ」や「敏捷○%アップ」といった効果が備わっている。その中から、キャラの配置によって与えるダメージや敵に狙われる確率が変わるという仕様だ。屈強な盾役がいるのであれば、そのキャラを前面に押し出し、後ろから高火力のキャラで攻撃するなど、何がオススメかについては自身のパーティバランスによっても変わってくるはず。
 


 

ジョブと武器の組み合わせで独自のバトルスタイルを確立

 
最後に、より強大な敵を倒すためにも欠かせないキャラの育成要素に触れていく。本作には、基盤となるキャラレベルのほかに、ジョブレベルや装備レベルなど、豊富な育成項目が用意されている。
 

▲レベルは基本的にアイテムを使用して上げることができるほか、キャラレベルやジョブレベルはバトルに勝利した際に得られる経験値でも上げることが可能。
 

▲それぞれの項目で強化に必要となるアイテムは、「実績」を達成することでもらえる。
 
ジョブや装備は、それぞれのキャラに対応したものをセット・装備できる。なお、武器のほかに装備できるアクセサリーに関しては、フィールド上の宝箱やクエストの報酬などで入手できることを確認している。
 
また、ジョブはメイン、サブ1、サポートの3種類までセットできる。サポートに関しては、自身のジョブに関わらず、誰のものでもセットすることが可能だ。また、それぞれの箇所で発動する効果は以下の通り。
 
・メイン:ジョブボーナス、アクションスキル、オートスキル
・サブ1:アクションスキル
・サポート:オートスキル
 

▲ジョブレベルを上げることでオートスキルが解放されるほか、「モル」と「強化素材」を使用することでアクションスキルのレベルも上げることができる。
 
武器の装備に関しては、メインにセットしているジョブに見合ったものを選択することができる。武器によっては、アクションスキルやオートスキルが備わっているものもあるようだ。
 

▲ジョブレベルと同じく、アイテムを使用することで強化が可能。
 
バトルに関しては、このジョブと武器の組み合わせが非常に重要で、最もプレイヤーの特色が反映される部分となる。今回のβ版では、ライやトノトには片手剣と大剣のジョブが、イタクには槍と弓、ポッケには杖と銃というように各キャラに複数のジョブが用意されていた。これらの中から、先の陣形と組み合わせて、攻撃力と防御力のどちらを重視するか、近接と遠隔の選択、魔法職を入れるかなど、かなり好みが分かれる選択ができるようになっている。攻略が進んで選択肢が増えるほど、場所や敵に合わせた戦略を考えられるようになるので、より有利に進められるパーティを編成するのも楽しそうだ。
今回の体験プレイから、『最果てのバベル』は骨太なバトルシステムと、豊富な育成要素のうえに成り立っている本格派RPGであることが伺えた。また、この両者の相性が非常に良く、戦闘と育成のサイクルが回り出すと、つい止め時を見失って遊び続けてしまう没入感のあるタイトルに仕上がっている。筆者の結論を述べると、シナリオや高難易度コンテンツに関してはサービスが始まってからの展開によるところが大きいので言及できないが、ゲームの根幹となるシステムやクオリティの面に関しては充分にヒットの要因が備わっているのではないかと感じた。ゲームを遊んでいて、「気付いたらこんなに時間が経っている!」という感覚は、本当に面白いゲームにこそ生まれるものであると考えるからだ。

 
(取材・文 編集部:山岡広樹)



『最果てのバベル』
 

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© 2018-2019 COLOPL,Inc.
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
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