【イベント】ファリアー、説明会&勉強会"駿馬YOKOHAMA KAIKOU「邂逅」"を横浜で開催! "世界観とゲームデザイン"に関する座学+演習や企業による会社説明会を実施


ファリアーは、3月23日(土)、横浜みなとみらいで、"駿馬YOKOHAMA KAIKOU「邂逅」"を開催した。

本イベントは、当媒体の連載記事「ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN-」(関連記事)でもお馴染みの馬場保仁氏が主催する、学生向けゲームクリエイター育成のための勉強会(関連記事)で、今回で24回目を迎えた。当日は、地元横浜や都内近郊、さらに仙台から84名の学生が駆け付けた。

同年代の学生同士が集まり互いに刺激し合うことができる駿馬は、学校の中だけでは味わえないアウェイの雰囲気がある。駿馬のように外のイベントに参加し、より早い段階でアウェイの環境に慣れておくことで「就活に臨んだときに結果が出やすい、というか後悔しない」と馬場氏。「企業さんも来てご覧になっているので、精一杯ワークショップに取り組んでください」と学生たちに檄を飛ばした。



冒頭、自己紹介用として学生たちに見せたスライドには、ファリアーのユニフォームを着た馬場氏の写真と自身の趣味(宝塚歌劇、乗馬、カレーライス)が記されていた。これは「面接などで、何かしらの形で特徴がある=印象に残りやすいと良い」という理由からで、そうすることで会話のネタになるという。

馬場氏は学生たちに常々「何事も100以上やりなさい」と言っているそうで、自身もカレー屋に1000件以上行っている。自分が好きなことを100以上こなすことで、そのことについて語ることができるし、自分なりの考え方・評価視座が出てくるという。ゲームをプレイして「おもしろかった」というのはユーザーの意見。そこから踏み込んでなぜおもしろかったのかを語れるようになればそれが企画につながっていくという。



だから「ゲームでも、マンガでも、アニメでも、たくさん吸収すること。色々なものをインプットしてヒントを得る」ことが重要と馬場氏。

また、「インプットしたものをヒントに企画を作ってアウトプットする際、何らかの言葉であったり表現手法が必要になるので、語彙力、ボキャブラリーがないと厳しい」とも。インプットは積極的にするが、アウトプットには消極的な人も多いそうだが、「インプットだけじゃなく、アウトプットもしていかないと、こうすれば人に伝わる、伝わらないというものがわからない」(馬場)とのことだ。
 

■第一部 座学「世界観とゲームデザイン」について




そして本題に突入。第一部は座学として、"世界観とゲームデザイン"をどう考えるかについて、馬場氏が語っていった。

まず馬場氏は、自身が過去に手掛けた『プロ野球チームをつくろう!』シリーズの歴代パッケージデザインについて触れた。シリーズ初期と後期を比較すると、デザインがシンプルになっているが、これは球団ロゴを入れなければならないなど、プロ野球機構のレギュレーションが厳しくなったからという背景がある。

そこで馬場氏はロゴを前面に出し、選手も球団ロゴもパッケージ裏にまわしたそうだ。最終的に「野球ゲームであること、セガの作品であること」という『やきゅつく』の世界観が伝われば良いというわけだ。

では、そもそも世界観とは何なのか? これはストーリーやシナリオ、設定、キャラクターのことだと思いがちだが、「これらは世界観を構成している要素で、そもそも世界観があった上で、シナリオやキャラクターが決まる」と馬場氏。

そうではなく、神話・宗教、文化・芸術、社会・国家・政治、技術、魔法といったアクシオム(公理・法則)があった上で、世界が定義され、シナリオやキャラクターが決まるという。



また、発想のスタートとしては、"●●(映画、ゲーム、小説等)みたいな世界"で良いとし、発想の引き出しを増やすために色々な映像を見ることが必要とのこと。




▲戦国系のゲームにおける世界観の設定についての事例も紹介された。

次に、なぜ世界観が必要なのか? という話に。これは、ゲームデザインやルールを直感的に受け入れやすくなり、操作方法も直感的にわかる場合もある。つまり世界を理解することでそのゲームにおける"常識"がユーザーに醸成されるというわけだ。

また、「画面を押し続けることで糸を巻いて、タイミングよく離すと魚が釣れるという操作が気持ち悪いし、実際プレイして釣れない人が多かった」と。某釣りゲームを例に挙げた馬場氏。

「本当は一度タップしたらオートで糸を巻いて、もう一回タップしたら釣れるで良かった。僕らは釣りの感覚を持っているけど、操作は明らかに逆の方向を向いていた」(馬場)とし、直感的にゲームを理解させるためにも世界観は重要だと述べた。

さらに馬場氏は世界観を乱す存在として、ゲームシステムやメタゲームを語るキャラクターについても触れ、「"ガチャ"とか"デッキ"とかを、キャラクターが知っていることが世界観を壊してしまう」という。ただし、主人公たちと明らかにことなる種族(妖精、ロボット等)が説明するのは特殊な存在ということで許容範囲だとした。

最後に馬場氏は、世界観とゲームデザインについて振り返り、「企画立案時には、世界観とゲームデザインのどちらから考えても良いが、この2つは入り組んでおり表裏一体で構成されている必要がある」とまとめた。


 

■第二部 演習「格闘ゲームのキャラクタを考えよ&RPGのプロローグと旅立ちを考えよ」


続いて、第二部では、いよいよ学生たちが与えられたテーマに対してワークする演習に突入。今回は、各テーブルを青と黄の2グループに分け、青グループのテーブルに座る学生たちは、"格闘ゲームのキャラ"、黄グループは3つの要素を組み入れて”RPGのプロローグと旅立ち”を考えるというお題で行われた。

最初の30分は、個人個人が回答用紙にアイデアを記入し、その後20分で同じテーブルの学生どうしてプレゼンを行いチームの代表者を決めるという流れで進んでいった。



 
そして、各グループの代表者がステージに登壇し、考えた企画を発表。"格闘ゲームのキャラクタ”を考えた青グループの代表者は、「戦え!!ラーメンファイター」というタイトル名で、主人公が、病気でご飯を食べられなくなった妹のために全国のラーメンを食べて倒していくという内容。

ラスボスの"ラーマオウ"は、某野菜マシマシ系の外観をしており、必殺技"ヤサイガエシ"は野菜を返して出てくるコシの強い麺で相手の体を力強く打つというものだった。



一方、3つの要素から”RPGのプロローグと旅立ち”を考える黄グループの代表者は、さまざまなアイデアを文字として起こしたが、いまいち馬場氏に伝わらず。

馬場氏はRPG班のお題のほうが難しいと前置きしつつ、「ストーリーに逃げてしまいがちで結構余計なことをだらだら書いてしまっている。聞き手としては結論を話してほしいし、たくさん話しても伝わらないと意味がない」と評した。また、地図を書いたりイラストがなかったところも伝わりづらい要因に挙げた。



ただ、勇気をもって発表した代表者を称えるとともに、「ほかにも同じように伝わりづらい企画書になっている人もたくさんいる。今日ここでダメだったと思ったこと、なるほどなと思ったことを大切にして今後に活かしましょう」と厳しい中にも愛あるコメントを残した。
 

■会社説明会&トークセッション




座学+演習を終えると、続いては"駿馬YOKOHAMA KAIKOU「邂逅」"参加企業による会社説明会が行われた。今回参加したのは、アカツキ、グリー、ツェナワークスの3社。

参加学生たちは3つのグループに分かれ、会場内の各企業ブースでそれぞれ25分ずつ、担当者から会社についての説明を受けたり、気になる質問をぶつけていた。


▲アカツキブース。


▲グリーブース。


▲ツェナワークスブース。

そして、会社説明会を終えると、参加企業の代表者を迎えたトークセッション「KAIKOU(邂逅)トーク!!」が行われた。

登壇したのは、ツェナワークスの笹平大介氏(執行役員)、グリーの丸川賢太郎氏(人事本部 人材開発部 新卒採用チーム)、アカツキの田中公彦氏(ディレクター)の3名。馬場氏は司会進行役を務めた。



▲(左から)笹平氏、丸川氏、田中氏。

まず、"駿馬YOKOHAMA KAIKOU「邂逅」"に参加した学生たちの印象について、田中氏は「(会社説明会で)質問が多く、とても意欲的だと感じました。自分が就活していた時は聞きたいことを聞いたら終わりでした(笑)」とコメント。

「ワークショップで短い時間の中、その場で初めてみたテーマに対して、あれだけのクオリティのアウトプットが出せてすごいです」と丸川氏。「ただ、人に伝えるという部分は課題。これからの経験で良くなっていくと思います」と加えた。

学生たちが自身の娘と同い年という笹平氏。ツェナワークスはこれまでも駿馬に参加しているが、「色々な地域の学生を見てきましたが、馬場さんに始まる前に周りの人と自己紹介しておくと良いよ、と言われる前に自ずとコミュニケーションをとっている方が多くて驚きました」とのこと。また「ワークショップのお題が難しい中で考えてやっていたので、横浜は一味違うなと感じました」とコメントした。

次に、各社どんな人材が欲しいかをテーマにトークを展開。

丸川氏は「職種によって話は違ってきますが」と前置きしつつ、「モノ作りが大好きなというものがベースにあって、かつプレイヤーとしてだけでなく作る側として全面に出せる人」。そして、「モノづくりを手段にしながらその先のユーザーの心を震わせるために、チーム、組織で一緒にやることにおもしろさを感じられたり、自分にないものを持っている人達をリスペクトし、巻き込んでいくことができる人」を挙げた。

「どの会社もそうだと思うのですが、アカツキでも素直な人が良いと思っています。」と田中氏。アカツキはインサイドアウトという「7つの習慣」という書籍に出てくる言葉を使っているという。これは周囲を変えるより、まず自分の内面を変えるというもので、「人のせいにできるシーンはいくらでもある。それを自分でこう変えていけばもっと良くなるという捉え方をできるかできないかで、成長スピードが大きく変わると思います」(田中)

また、「プロジェクトリーダーや先輩から意見をもらう場面で、意思決定が揺らぐことはあっても、自分が良いと思ったものを採用するようにしているし、違うと思ったら徹底的に議論する。結局そこが自分の意思だというものがないと、出したあとにあれは人のせいだという思考になってしまうので成長しないし、その人自身結果も出せない」と田中氏。常に自分がどう環境を変えていけるかを考えられるかどうかがアカツキでは大事だと語った。

「スキルについては後からついてくるので、まずはゲームが作りたいと思っている人が良い」とは笹平氏。ユーザーやクライアントからの声で心が折れることもあるが、「それでもゲームが好きなら乗り越えられる」とのこと。加えて、「人を楽しませることが好き、感情を揺さぶりたいと思っている人」も理想の人材として挙げていた。



最後のテーマは、"新卒の育成方針"について。

「小さい会社なので新卒の数は少ないんです。毎年は入らないんですし、今年は2人。まさに駿馬で出会った若手が入ります」とは笹平氏。基本的にツェナワークスでは、実践投入をしているそうで「研修はもちろんしますが、やって覚えることって古臭い言い方ですが、そのほうが身に付くし、座学だけだと頭に入らなったりするんです。まずはやってみて、しっかりOJTなりメンターをつけて"こうしたほうがいい"、"ここはいいよね"というところでのコミュニケーションからの実践をやってもらう」という。その先にやりたいことをヒヤリングしながらその方向に進んでもらうという、ある意味型のない育成方針であると語った。

また、笹平氏は「ゲームが作りたい人じゃないとやっていけない業界だと思う。ほかにやりたいことがないからなんとなく自分が好きなゲームでいいや、という思いで来る人は業界的にも周りからも信頼されない、期待されない。ゲームが作りたいから、やりたいことはあるはず。自分が描いたイラストのゲームを作りたい、自分が考えたゲームをディレクションしたい、すごい動きをするプログラムを書きたい。そう思う人はやればいいと思うし伸ばしていきたい」と続けた。

「メンターが付いてくれて、OJTのような形で新卒を育成するところは基本的には同じ」とは丸川氏。「業界的にインターネット領域は、若手が盛り上げて作っていくものであるし、グリーの田中社長自身がそれを体現して来られた方」という。「例えばGoogleとかFacebookを始めとした業界を牽引してきた革新的なサービスはもともと20代、30代の若手が生み出してきた」とし、だからこそ「新卒1年目、2年目、3年目のメンバーに大きな裁量権、大きな責任を与えてくれる場があります」(丸川)

なぜ新卒に任せてくれるかというと、「いま話した背景はありつつ、新卒の人達がユーザー、お客様にとってどういうものだったら良いのか、どういうものを届けたら最終的に喜んでくれるかを心の底から考えて、世代を超えて切磋琢磨している状況があるからだと感じている。だからこそそれを考え抜いた新卒の人達がプロデューサーやマネージャーに大抜擢されたり、VTuberという新しい領域で活躍したりできる文化がある」(丸川)とのこと。

田中氏は「配属先よりも先に、トレーナーを決めています。新卒1人に対して1人、その人の成長にとって最適なトレーナーをアサインし、そのトレーナーのいるプロジェクトに配属させています」という。ただ「人によって、様々な特徴があるので、相性をみてトレーナーを決定している」(田中)

若手の活躍例として、「僕は新卒1年目ですが、現場でチームを持たせてもらっているので、そういう会社はなかなかない」と田中氏。さらに田中氏はイベントに登壇したり面接にも出ているという。そういうことをやりつつ、「この4月に入社予定のメンバーのトレーナーを担当する予定で、その研修作りもしているんですが、それも全部自分がやりたいといって任せてくれている。任された仕事に対して全力でやることの繰り返しで仕事が増えていった」と説明した。

また、アカツキはゲームタイトルごとにプロジェクトが編成されており、その半数以上で新卒入社の社員がプロジェクトリーダーを務めている。「アカツキは新卒採用を始めたのが2015年からなので、一番年上の新卒入社の社員でも4年目。4年目までの人材がゲーム事業部の大半を任されているのは、他の会社ではなかなかないのではないか」と田中氏は語った。

トークセッション後には、学生たちからの質問に登壇者が答えたり、参加企業に学生たちが持参した作品を見てもらう場などが設けられた。今回の駿馬も、参加した学生、そして企業にとって有意義なイベントだったと言える。


 
株式会社ファリアー
http://farrier.jp/

会社情報

会社名
株式会社ファリアー
設立
2016年7月
代表者
代表取締役社長 馬場 保仁
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