【年始企画】「ユーザーに喜んでもらうことをしたい」 『アズールレーン』のYostar李社長に聞く2018年振り返りと今後の展望…新作2タイトル、規制に困る中国企業との協業も?

スマートフォンゲームアプリ業界の最前線で働く方々に話を伺う年始恒例企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2018-2019」。これまでは市場動向の振り返りと展望をメインとしていたが、今回は、各社の個別の状況にフォーカスし、2018年の取り組みや課題、そして、2019年の展望について語ってもらうことにした。

今回は『アズールレーン』の国内パブリッシングを行っているYostarにインタビューを実施。同社の代表である李衡達(りこうたつ)氏に、同社の2018年の振り返り、2019年の展望を聞いた。
 

Yostar
代表取締役
李衡達氏
 

■ユーザーさんに楽しんでもらうのがまず一番、『アズールレーン』から1年を振り返る

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは2018年の振り返りをお願いいたします。

まずオフィスの話なんですが1月に引っ越しを行いました。前のオフィスは本当に狭くて狭くて狭くて、ようやく引っ越しをしてスペースも広くなり、あの地獄から出ることができました(笑) それに伴い人員の確保も上手くいきましたね。立ち上げ当初の2017年は10人もいませんでしたが、今は30人を超えました、今年は色々な部分で余裕ができたと思います。

ーー今年『アズールレーン』のゲーム内イベントはもちろん、リアルイベントも多く取り組まれていましたね。

リアルイベントに関しても好評だったのではないかと思います。できるだけユーザーさんに対しておもしろいことを提供できるように意識してやってきました。

ーーファンサービスという意味ではYostarさんはかなり力を入れてますよね

多くの新作タイトルがリリースされ続けているこのご時勢、ファンサービスに力を入れられないようであれば、ユーザーさんから見捨てられてしまいます。2017年9月に『アズールレーン』をリリースした際には、我々はただ攻めればよかった。今年に入ってからは基盤を固めるような動きになっていったかなと思います。

ーー4月にはWargamingの『World of Warships』とのコラボ、丸ノ内線新宿駅メトロプロムナードジャックがありました。


『World of Warships』とのコラボは元々『アズールレーン』開発元のManjuuも含めて熱望していたことで、メトロプロムナードジャックはそのためものだったんです。開発中、Wargamingさん共々熱が入りすぎて当初想定していたロードマップからどんどん遅れ、濃い内容になっていきました。ただ、その結果として広告枠だけが残るという大惨事になった(笑)

ただ結果的にはコラボとしてもの凄く良いものが出来上がったんです。『World of Warships』のユーザーさんは『アズールレーン』のプレイヤーも多かったそうなんですね。今回のコラボを機に『World of Warships』を初めた方もいらっしゃったようなので、相互にとってメリットのあるコラボになったと思います。


ーーコラボと言えば、9月の「装甲騎兵ボトムズ」は衝撃でした。

元々とあるインタビューで「『ザンボット3』とのコラボも面白い」なって話を思わず、その場の空気で喋ってしまったんですね。『ザンボット3』のストーリーは胃が痛くなるような話で、コラボをするには厳しいだろうとは思っていたんです。ただ、そのインタビューをサンライズの担当者さんが読んでいたようで「ザンボット3は、本気ですか?」と連絡をいただきまして。「冗談でしたー!」と心で思いましたが、『アズールレーン』のユーザーさんはロボットファンが多いですし、弊社内も同じです。

今回、せっかくサンライズさんとご縁が出来たので、社内で検討し「装甲騎兵ボトムズ」とコラボを決定しました。「装甲騎兵ボトムズ」はゲームの性質上あわないことは重々承知だったので、敢えて攻めてみたところでもあります。ただどうしても一発芸に近い感じになるので、シナリオには特に注力しましたね。

発表時の色々な意味で反響は大きかったですよ。今振り返ると一発芸以上のエンゲージメントになりましたし、我々としても「装甲騎兵ボトムズ」は面白いコンテンツで、コラボがきっかけで興味を持ってくれたのは嬉しかったです。

 

 
■IPコラボはユーザーに喜んでもらうため
 

ーー8月は夏コミ、9月に一周年記念のリアルイベント、そして『ケッコンVR』の発表と初夏からは怒涛のような日々だったのではないでしょうか

9月の1周年イベントは夏コミと並行して準備していて一番胃が痛かった時期です(笑)

我々はただのゲームパブリッシャーで、ゲームの運営を行い、ユーザーさんのサポートができればそれで良いというのを会社設立時に想定していました。『アズールレーン』はある程度規模が大きくなったので、さすがに色々なイベントをしないともったいないと今年はアクセルを踏みました。


ーー1周年イベントの生放送でアニメ化決定発表見ていたんですが、公開されたムービーは本当にハイクオリティな内容で驚きました。それと同時に『うたわれるもの』とのコラボの発表もありましたね。
 

アニメ化はあのクオリティーを維持できるのが理想であり、目指したいところです。来年の早い段階で続報を発表できればと思っています。『うたわれるもの』に関しては、中国の状況も踏まえたコラボで、日中両方のユーザーさんが喜ぶ内容だと思います。中国でもコアなファンが多くいるタイトルです。シナリオにも力を入れ、キャラの崩壊もなかったと思います。

ーーすごく気を使うところでもありますよね。

そうなんですよね。『うたわれるもの』とのコラボに関しては特にそうでした。

ーーコラボ先を選ぶのはどういう視点からでしょうか。IPを借りるにあたって、色々なポイントが有ると思います。

ユーザーさんが望むもので、ゲームの世界に一致するものという考えをベースにしています。ただ実際にゲームを始めてから大人の事情で難しいことが多々あり、努力はしたんですが実らず心折れることもありました。今はゲームの性質に一致することだけにこだわらず、「ユーザーさんが望んでいる」という点からお願いすることも多いですね。

ーーユーザーの望むものと売上の両立は凄く難しいバランスになると思います

僕の考えとしてはコンテンツビジネスは変なKPIにこだわると、面白いことが成り立たないと思っています。いったんお金のところは置いといて、ユーザーさんが喜ぶことをする。そうした時にユーザーさんが還元してくれるという考えなんです。

ーーその匙加減は凄く難しいところだと思いますが、その判断はどうやって行っているんでしょう

勘です。数字を見る部分もあるんですが、ユーザーとしての勘をまず大事にしています。

ーーその勘を養うにはゲームをしたり、街に出たり、他社の動向をチェックしたり

そうですそうです、他社の施策を見たりもしています。『バンドリ』なんかすごいですよ。マーケティングのやり方など尊敬してます。

ーークロスメディアなんか凄く上手いですよね

超上手いです。もう一回言いますが、超上手いですよ。同じ業界の人間の意見として申し分ありません。

また『ケッコンVR』ですが、残念な結果となってしまいました。ただせっかく開発をしたこともあり、ユーザーさんに届けられるように検討しています。公開時の反響も大きく、ユーザーさんも望んでいるサービスだと思っているので。今回トラブルがあった部分に関してもYostarとしてサポートしていきたいと思います。


ーー『ケッコンVR』は公開当初のこちらでも反響が大きかったのは覚えています。楽しみにしているユーザーも多いだろうなと思いました。再開を検討中ということで良かったです。

■2019年は2タイトルリリース予定。規制に悩む中国企業、国内進出での協業も?

ーー来年の予定を教えてください
 

先日新作として発表した『アークナイツ』は2019年度としていますが、おそらく2019年内に変更になります。来年の早い段階で進捗をアナウンスできるかと思います。
 
さらにほぼ決まりですが、2019年の秋か冬にもう1タイトルリリースしたいと思っています。良いことなのかわかりませんが、どちらのタイトルもキャラに「けもみみ」がついています。ネタバレになるので詳細はまだ言えませんが「けもみみ」がその答えです。Yostarや僕個人が「けもみみ」が好きな会社と思われるかもしれません。しかしそうではなく、コンセプトとしてたまたまなんです。

また事業はゲーム中心にはなりますが、昨今中国のゲーム規制の影響で向こうのゲーム会社はかなり困っている状況で、海外進出の意欲が高まっています。我々も日本で悪くないながらもやってこれた実績があり、そういった中国企業の運営やマーケティング、戦略の手伝いなどができればと考えています。まだ「そういうことしたいな」程度の段階ではありますが。


ーー中国のゲーム規制の影響はどれくらいのものなのでしょうか。

中国のゲーム会社にとってはもう死活問題というレベルです。我々も悪くないながらも日本でやってこれた実績があります。そこで中国企業の日本国内での運営やマーケティング、戦略といった部分でお手伝いなどができればと考えています。まだ「そういうことしたいな」程度の段階ではありますが。

ーー2019年に向けての抱負やメッセージがあればお願いします

我々は志が低いので抱負はありません(笑)

ただ『アズールレーン』をプレイされているユーザーさんには「やっていてよかった」と思ってくれる取り組みをし続けたいと思っています。また2つの新作のリリースをドキドキしながらして、ある程度成功してくれたらと思っています。もちろん大前提としてユーザーさんが喜んでもらうことをしていきます。

ーー本日はありがとうございました
 

会社情報

会社名
Yostar
設立
2017年1月
代表者
代表取締役社長 李 衡達
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