【CEDEC 2018】ポケラボが『戦姫絶唱シンフォギアXD』の事例から「新規ゲーム立ち上げ時にUI・UX特化エンジニアをアサインしたメリット」を熱弁!


ポケラボは、8月22日~24日にかけてパシフィコ横浜で開催された「CEDEC 2018」にて、「新規ゲーム立ち上げ時にUI・UX特価エンジニアをアサインするべき理由」と題したセッションを23日に実施した。

このセッションでは、ポケラボが『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』の開発時、UI及びUXに特化したエンジニアをアサインしたことが、ゲームの品質向上に繋がったという体験談を通じて、ゲーム開発におけるUIの重要さを伝えるといった内容だった。



登壇したのは、ポケラボの松村勝広氏。『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』ではクライアントの基盤部分の設計と実装を担当し、そこからさらに各種エンジニアへ作業が分化される。


▲ポケラボの松村勝広氏。

そもそも、UI特化エンジニアがいることで、どの様なメリットがあるかという点について、勝村氏は端的に「効率的な分業」、「UI実装の迅速化」、「あらゆるアイディアを試行できる」という3点にまとめたうえで、アプリの品質向上に繋がることを訴えた。



そして、UI特化エンジニアがどういった人材を指すかを明確にするため、勝村氏は「Unityでの画面作成のスペシャリスト」と定義した。

UI製作の工程を、UIの配置、ヒエラルキー構成、アニメーション作成、UIのパーツ構成と4段階に分けつつ、UI特化エンジニアがいることで、以下の通りすべての作業において能率が上がることを示唆した。






近年のゲーム製作におけるUI・UX作成には、デザイナー的な技術とエンジニア的な技術が同時に要求されるが、この両方を満たしている人材は多くないという。

現在のネイティブアプリは、以前のブラウザゲームの様なグラフィカルなデザインだけでなく、ゲームのシステム、ロジック面との親和性が求められるようになり、そのせいでUIに特化したエンジニアが必要になったと松村氏は話す。




ここから、実際にUI作成において現場で起きた問題の実例を紹介している。まずは、複数人で開発を進めた際に、UIの作りが各エンジニアの間でバラつきがあり、部品の重複といった問題が発生した。



▲こうなってしまうと、各機能の完成後に修正が必要になり、工数が大幅に増えてしまう。UIの品質の低下、バグ増加にもつながる恐れがある。

しかし、UI・UX特化エンジニアがいれば、ロジック部分のエンジニアは自分の担当部分に注力できるうえに、互いに干渉しあうこともなくなる。それら全てのUIを、特化エンジニアが一挙に請け負うことで、UIの統一化、共通化が計れる。



さらに、特化エンジニアが必要となるもうひとつの理由。新規開発で重要なアイディアを試せる環境作りについて話を進めていった。以下は、実際に『戦姫絶唱シンフォギアXD』に実装されている"ミュージックボックス"におけるUI製作の一例。


▲現在『戦姫絶唱シンフォギアXD』でも実装済みのミュージックボックスのUI。

ゲーム中でサウンドの周波数データが取れることが判明し、ミュージックボックスで周波数表示をしてみたいというアイディアが浮かんでから、それを実現するまでかかった時間はおよそ半日。これは、ロジックを担当するエンジニア、UI特化エンジニアの双方がいてこそ可能となった。



▲赤線で囲まれた部分に周波数の表示が追加されている。

UI・UX特化エンジニアをアサインする際には、プログラムをModel、View、Controllerの3つに区分するMVC構造をとることで、UI特化エンジニアとそれ以外のエンジニアの作業を分担しやすくすることを松村氏は推奨している。



▲これは、『戦姫絶唱シンフォギアXD』の開発現場でも取り入れられている手法だ。

特に、ControllerとViewを完全に独立させ、Viewにシステムに関するロジックを組み込まないように徹底することで、UI特化エンジニアがViewの変更をしやすい環境が生まれる。バグ発生の危険性も減るため、ギリギリまでの調整もしやすくなる。デザイナーやプランナーからの急な要望にも応えやすくなるといったメリットも発生する。





この他にも、現場でできる注意点として、UIをデザイナーがすぐに確認変更できるよう、特定のタイミングで出現するポップアップなども、シーンに直置きした状態で実装していく。

UIのアニメーションも、デザイナーが調整を行いやすいように、設定機能を実装しておくと作業がより円滑に進むようになる。




最後に、ここまでのセッションの内容を総括しながら、UI・UX特化エンジニアがいることによる変化をおさらいしていく。UI・UXとロジックの分業、作業の高速化、アイディアを実現しやすい体制など、特化エンジニアをアサインするだけで、製作環境には様々な変化が生じる。




ゲームが大規模になっていくに連れ、UIの規模も比例して大きくなっていく。切っても切れない存在である、UI作成のスペシャリストをアサインすることは、今後のゲーム制作の現場においては欠かせないファクターとなっていくだろう。

費用や期間を割くことになるとしても、UI・UX特化エンジニアの養成には大きなメリットがあるであろうことが、このセッションを通して感じられた。製作の能率向上を検討している場合は、まずはUI特化エンジニアのアサインを考えてみるのはいかがだろうか。

 
(取材・文 ライター:宮居春馬)
 
 
■『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』
 

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