【NDC18】圧倒的な自由度を誇る『Durango:Wild Lands』の魅力に迫る…ユーザー層や想定外の事象、日本版についてもインタビュー


ネクソン<3659>連結子会社のNEXON Koreaは、4月24日~26日の3日間、韓国最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 18(NDC18)」を開催した。
 
本稿では、本イベント期間中、日本メディア向けに『Durango:Wild Lands』(以下、『Durango』)の総括プロデューサーのイ・ウンソク氏と、クリエイティブディレクターのヤン・スンミョン氏に、「『Durango』韓国ローンチのその後とこれから」というテーマでお話を伺えたので、その内容をお届けしていく。
 

▲総括プロデューサーのイ・ウンソク氏(写真右)と、クリエイティブディレクターのヤン・スンミョン氏(写真左)。
 
なお、ヤン・スンミョン氏が『Durango』のゲームデザインについて講演したセッションについても別途、記事化しているので『Durango』について詳しく知りたい方はそちらの記事も参考にしていただきたい。
 
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■ハードコアなゲームを遊んでいるのはライトユーザー!?

 
インタビュー開始前には、ウンソク氏より『Durango』リリース後の韓国での反響について語られた。そもそも『Durango』とは、韓国で2018年1月26日に配信が開始されたモバイルのMMORPGだ。ウンソク氏は、当初ハードコアな面が強いRPGとなっているためコアユーザーが数多く定着するのではないかと予測していたが、実際にサービスを始めてみたところ、予想以上に普段はゲームをあまり遊ばないライトユーザーの参入が目立っていることを明かした。ゆくゆくは世界各国に配信することを目標に、現在はユーザーから届く要望に応えてアップデートを行っていると現状を話した。なお、年内には日本のユーザーにも『Durango』を遊んでいただけるようになると嬉しいという見通しも明かされた。
 


――:現在、韓国のユーザーからはどういった要望が届いているのでしょうか?
 
ウンソク氏:『Durango』には、アイテムや建物に耐久度システムがあります。ゲームに慣れていないユーザーにとっては、この点が難しいと感じられることが多かったので、緩和する修正を行いました。また、韓国のモバイルゲームにはオートプレイが実装されているゲームが多いが、『Durango』は当初、全て手動で操作するシステムとなっていたので大量生産をする際に不便だという意見が寄せられました。そのため、今はオート制作が可能なシステムに改修しました。
 
――:何故、元々オートを入れていなかったのでしょうか?
 
ウンソク氏:モバイルゲームではオート操作が入っていることは多いですが、PCゲームにオート操作が入っていることは多くなかったので必須ではないと考えました。現に、CBTを行った際に余裕を持ってプレイするユーザーの間ではで不満がなかったので重要度は高くないと感じていたこともあります。
 
――:予想以上にライトユーザーが多く参入された要因はどういったところにあるとお考えですか?
 
ウンソク氏:MMORPGの場合、メインの職業は狩りや戦闘になりがちです。その補助的な役割として釣りや料理といった生活要素が入る形となります。こうした一般的によく見られるMMORPGでは、全員が戦士として一人前にならなければいけません。しかし『Durango』では、ハンターも全体の中のひとつの職業に過ぎません。ユーザーの選択によっては、安全な街から一歩も外に出ることなく最高レベルにまで達することもできます。無理に戦士にならずとも、自分の職業を認めさせることができるという点がライトユーザーにも受け入れられた要因ではないでしょうか。


 
スンミョン氏:元々MMORPGにはタンクやヒーラーといった役割分担がありますが、『Durango』では、狩りや制作など、各々の職業がコラボレーションする瞬間が最も楽しめる設計となっております。小さい頃にままごとをしたように、家族同士でゲームを楽しんだときのような感覚があるので、普段あまりゲームを遊ばないユーザーも楽しめているのではないかと思います。
 
ウンソク氏:また、韓国のMMORPGの多くはヨーロッパや中世ファンタジー、魔法、ドラゴン、騎士などをテーマにしています。その点、『Durango』は恐竜が住んでいる野生の地に現代人が飛ばされたらどうやって生き残るか、というユニークな世界観を持っているので、こうしたテーマの違いからゲームを遊んで来なかった人にアピールできたと思います。

 

■開発陣も想定外の事象が多々発生!


――:ゲームの中ではどのようなコンテンツが人気?
 
ウンソク氏:『Durango』のオープンワールドは、事前に開発者が描いて提供しているような土地ではありません。ユーザーの数によって、島が新たに生成されたりなくなったりするのです。なので、最も喜ばれているコンテンツは未知の土地を探検することです。
 
他のゲームではコミュニティに行けば攻略や地図が載っていますが、『Durango』には地図が存在しないため、自らが探索しなければなりません。その過程で、自分だけが希少な資源が得られるスポットを見つけたときの喜びは一入です。『Durango』には、そういった本能を刺激する喜びがあります。
 


スンミョン氏:また、ユーザーはどのワールドにも自分が望む土地に建物を建てることができます。決まった建物はなく自分の好みのスタイルで建築できるので、庭がある家、迷路のような家など、夢の家を実現できる世界となっています。自分好みに飾り付けをできるところも楽しんでもらえている要素のひとつとなっていますね。
 
ウンソク氏:ユーザーが自分の家を持てるモバイルゲームは他にもたくさんありますが、その多くは個々がインスタンスワールドをもらって建設するという形です。一方、『Durango』は不特定多数のユーザーが共有するワールドに私有地を宣言するような形になるのでかなりダイナミックです。なので、例えばゲームの中で家族や友人と家を共有しながら遊ぶことができますし、役割を分けて共有・分担ができる点が他のゲームとの差別化要素に繋がっています。
 
そのほか、アイテム制作の自由度が高く、いろんな属性のアイテムを組みあわえることで新しいアイテムを作ることができます。その代表的な例が料理になるのですが、想像できる全ての料理が作れるようになっているので、誰がより可笑しい料理を作れるかを競い合っているということもあります。具体的な例としては大衆的に人気となっている料理に「刺し身・蒸し・蒸し」というものがあります。豪華な刺身を2度蒸すなんということは、リアルの世界ではあり得ないでしょう(笑)。ただ、ゲームの中では効率が良い料理として愛されているのです。この料理は、元々ゲームの中に用意されていたものではなく、「刺身」というレシピと、「蒸す」という料理法が存在していたところにユーザーが自分で発想して組み合わせたんです。このようにクリエイティブに遊べるところが魅力になっているのではないでしょうか。

 


――:開発陣も想定していなかった遊び方が生まれるというのは非常に面白い傾向ですね。他に想定していなかった動きはありましたか?
 
ウンソク氏:ハンバーガーを水と一緒に煮てスープにして食べるといった料理も存在しています。『Durango』のコミュニティでは、ある部族のメンバーから「我々の料理士は気が狂っている。全ての料理を鍋にして倉庫にしまっているのを何とかしてください」という訴えが届いたこともあります。
 
料理を作る際に使うツールも、基本的には赤土で鍋を作れるようになっているのですが、同じ属性なら制作できるようになっているので、赤土がなければ動物のフンでも鍋を作れるわけです。匂いは気になるところですが、そうして部族のメンバーに料理を食べさせている料理士もいると聞きます(笑)。
 
スンミョン氏:料理以外にも、建物の部屋区分は自由に設定できるようにしているので、広い空間を全て1コマ1部屋にして中々出られないような家を作ったり、家の中を抜けたところにテーマパークから拾ってきた遊び道具を置いたり、自分がゲームの中で書いた看板が置いてあったりとユニークな家を作っているような人もいます。

 
――:プレイヤーの職業選択にはどのような傾向が見られますか?
 
ウンソク氏:ゲームなので、必ず現実の自分を投影しているわけではないということはあります。これは、職業だけでなく性別に関してもそうです。中には現実の自分を投影してプレイを楽しんでいる人もいますが、どちらかと言うと自分が人形を持って遊ぶイメージの方が近いと思います。また、韓国では効率を重視する傾向も多く見られることから、狩りに有利だと考えて軍人を選択するなど、将来的に自身の理想に近付けやすそうな選択をしている人もいます。
 

 

■気になる日本版のリリース時期は?


――:カルチャライズなど含め、日本向けにはどういった調整を行われるのでしょうか?
 
ウンソク氏:我々は、ゆくゆくは『Durango』を世界のシングルサーバーで運営することを大きな目標としています。そのため、日本専用に何かをするわけではなく、日本の文化が反映されたコンテンツを全世界に向けて発信していきたいと考えています。既に料理スキルのローカルフードに「和食」が入っていたり、アイテムとして「刀」や「忍者服」を取り入れています。
 
また、ローカルIPともコラボする予定です。韓国ではバーガーキングとコラボしてお店で食べられるものと同じものをゲームの中で食べられるようになったり、インドネシアのお菓子メーカーとのコラボなどを考えています。

 
――:ユーザーに長くプレイを続けてもらうために工夫されていることを教えてください。
 
ウンソク氏:ずっと変わり続けるゲームであることでしょうか。例えば、最高レベルを60から70に引き上げるような垂直的なコンテンツ追加はあまり考えておらず、水平的な遊び要素を提供する形を考えています。今のところ、ストーリーパックの配信を予定しているなど、同じ動作の繰り返しにならないよう広げていくことが長期プレイに繋がると思います。
 


スンミョン氏:ユーザーが望む方向に変わっていける世界観にしていきたいですね。最近でじは、βテストを終えて「部族戦」というコンテンツが正式に実装されました。部族同士で競争することで、より長くプレイしていただけるのではないでしょうか。


――:ちなみに、部族戦とは具体的にどういった遊びができるものでしょうか?
 
スンミョン氏:『Durango』には、最高レベルである60を越えたユーザーのみが入れる「無法島」という場所があります。ここでは、同じ部族でなければPvPが可能となっています。無法島には貴重な資源を得られる拠点があり、それぞれの場所を占拠して守るために各部族が戦っています。部族同士が拠点を奪い合うために努力をするというコンテンツになります。


 
――:日本版のリリース時期は決まっていますか?
 
ウンソク氏:申し訳ないのですが、まだ具体的には決まっておりません。
 
――:最後に、配信を待たれている日本のユーザーにコメントをお願いします。
 
ウンソク氏:『Durango』のプロジェクトは、どこでも見たことのないユニークなゲームを作ってユーザーに提供したいという想いからスタートしています。まだ日本ではPRも行っていないので『Durango』のことを知っているユーザーは多くないかもしれませんが、日本でサービスを開始した際にはきっと特別な体験をしていただけると思います。これからプレイしてくれることになるユーザーさんたちには、前もって感謝を伝えておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
スンミョン氏:我々には韓国だけでなく、世界に通じるゲームを作りたいという想いがあります。その中にはもちろん日本も含まれておりますし、日本のユーザーのみなさんのことも非常に大切に思っておりますので、是非、日本のユーザーにも楽しみにお待ちいただければと思います。


 
 (取材・文 編集部:山岡広樹)



■関連サイト
 

NDC公式サイト(韓国語、英語のみ)

株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
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NEXON Korea(ネクソンコリア)
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