【連載】第3話「30代♀、自分が向いている方角を考える」- 今の仕事は望んだキャリアとなるだろうか


IT企業で働く30代女性(プロジェクトマネージャー職)の作者が、仕事におけるアレコレを語っていく連載記事「30代♀、東京のすみっこでさんかく座り」。女性目線ならではのキャリアアップや仕事上の立ち回りはもとより、ついつい職場で起こりがちな衝突や悩み、そして新たな気付きを赤裸々につづっていく。倒れては起き上がり、それでもひた向きにデスクへと向かう彼女の「仕事」との付き合い方を、少し覗いてみましょう。

 


 

■第3話「30代♀、自分が向いている方角を考える」


こんにちは、原です。すっかりご無沙汰してしまいました。2ヵ月ほど仕事の山場が続いた中、『ポケモンGO』でカビゴンを探す旅に出たり、「シン・ゴジラ」を見に行ったりなど、ハードなスケジュールが続き、なかなか筆を取る時間がありませんでした。ごめんなさい。楽しかったです。

さて、前回(遠い記憶となりつつありますが)では、プロジェクトにおける兼任の悪影響についてお話ししました。不用意な兼任はプロジェクト全体の進捗のみならず、プロジェクトメンバーのキャリアにも不利益をもたらします。その最たるものが「キャリアの方向感覚を狂わせる」ということです。

方向感覚がおかしくなってしまうと、どうなるでしょうか。まず間違いなく、迷子になってしまいますよね。めまぐるしく変化するゲーム業界では、かなりの数の“キャリアの迷子”がいるのではないでしょうか。


 

■条件満たしてパパッとダーマ神殿で転職したいところだが…


方向感覚の疎い人は地図をくるくる回しながら歩くといいますが、まさにそのとおりで、実は私もかなりの方向音痴です。自分の想定している道と、地図の示す場所を突き合わせることが苦手で、つい地図をくるくるやってしまいます。

想定している地形と地図が不一致となると「おかしいなぁ」などと言いながら進むのですが、もはやその時点で迷子になりかけていたりします。そして、「迷子になったかもしれない…」と思ったときには、もう目的地からだいぶ離れてしまっているのです。

このような、想定していた経路との乖離は、実は私たちの働き方においても十分起こりうることです。たとえば、キャリアを一本道であるかのように考えている方も少なくないのではと思います。何年かの経験を積むと上位の職への道が開かれたり、必要なスキルや資格を取得すると、より難度の高い課題を解決できるようになったり…という具合です。言うなれば、ゲームのジョブシステムのようにキャリアパスをイメージしてはいないでしょうか。
 

かの名作『ドラゴンクエストIII』では、レベル20になると転職ができるようになり、「遊び人」は、魔法も打撃も強い「賢者」という上位職に就くことができるようになります(ただし、悟りの書が必要)。

また、『ファイナルファンタジータクティクス』では、素早い2回攻撃ができる「忍者」がいるのですが、「弓使い」「シーフ」「風水士」と3つの職業を経験しておく必要があり、そもそも条件にある「風水士」のスキルを会得するためには下位職「モンク」から育成をしておかなければなりません。

ゲームのジョブシステムでは、就きたい職業までの経路が非常に明確です。どんな仕事でどのくらいの経験(レベル)があればよいか、転職に必要なスキルは何か、きっちり経路が決まっています。翻せば、既定の経路以外のキャリアパスが認められることはありません。

どんなに大活躍している戦士でもレベル15だったなら、ダーマ神殿の神官に「レベルが足りないよ」と言われてしまいます。あるいは、忍者への転職を熱望する魔法使いがいたとしても、彼は忍者になることはできません。魔法使いとしてのスキルでは忍者の必要条件を全く満たせないからです。

でも、私たちの住む現実世界はゲームほど単純ではありません。転職に必要なスキルは千差万別ですし、年齢や経験だけで今後のキャリアが決まってしまうということはないはずです。時に、仕事への情熱は経験不足を補い、余りあることすらあります。

キャリアは決して一本道ではありません。

複雑に分岐し、遠回りしたり、意外な近道が見つかったりするものです。もし、エンジニアだからプランナーになれないとか、アシスタントは一生メインになれない、なんて考えていたなら、それは思い込みにすぎません。現実のキャリアは、あなたが思う以上に可能性を秘めていて、それと同時に複雑怪奇でもあり、やりたい仕事までの経路を正しく選び取ることは並大抵のことではないのです。


 

■本当にやりたい仕事とは


とかく“キャリアの迷子”になりがちな私たちですが、失ってしまった方向感覚をどうにかして取り戻したいところです。昔の人は太陽や星の位置から方角を割り出したといいます。現代の私たちも、何かを指標にして、やりたい仕事の方角を向いているかどうかを確認できると良いかもしれません。

とは言いつつも、本当にやりたい仕事とは一体どのようなものなのでしょうか。

具体的な仕事内容を把握できている人もいれば、そうでない人もいるでしょう。今は明確なイメージがなくとも、やはり今の自分のスキル(できること、できるようになりたいこと)を活かせる仕事がよさそうな気がしますし、関心や興味のある業界・技術に関わりたいですよね。

あとは、環境(主に組織や人間関係的な部分)も気になるところです。誰しも仕事を探すときは職務内容と企業の知名度ばかり気になってしまうものです。でも、本当にやりたい仕事は自分自身にしかわかりません。あなたの求める「スキル」と「関心」と「人との関わり方」が重なるスイートスポットを探しましょう。それが、本当にやりたい仕事のイメージとなるはずです。


 

■あこがれの企業からの求人といえども…


「スキル」と「関心」と「人との関わり方」は、切っても切り離せない重要な三要素です。

たとえば、以前から興味を持っていた会社から、スキルを生かせそうな良い仕事のオファーがあったとしましょう。でも、静かな環境で黙々と作業をすることが好きなのに、いきなり顧客先でいろいろな人に囲まれて仕事をしなければいけない、とわかったら、どうでしょうか。あこがれの企業からの求人といえども、幸せにはなれそうにありませんよね。

仕事に充実感を見出せない、あるいは、気苦労ばかりしてしまうという自覚症状のある“迷子”の方は、ぜひ三要素の見直しをしてみてください。きっとキャリアの方向感覚がはっきりしてくるでしょう。


 

■武器(スキル)は何のために使うのか


以前、プロジェクトは冒険だと言いましたが、キャリアとは「冒険の書」といえるかもしれません。

スキルは冒険の中で手に入れた武器です。最初は大した力にはなりませんが、しっかり育てれば、ドラゴンをも打ち倒す大剣となります。

しばしば、武器を手に入れるための冒険をしている人がいますが、あまり良い結果にはなりません。武器は、魔物(仕事の上での課題)をやっつけるために使うべきでしょう。

自身が望む人との関わり方は、その人の「属性」となります。こればかりは性格や世代に基づくので、かなり変化しづらい要素です。一方、関心や興味はコロコロと変化します。ゲームで言えば装備品の「アクセサリー」のようなもので、それだけでは戦うことができませんが、能力を高めたり、成長を劇的に促進させる働きがあります。


 

■関心や興味の変化


関心や興味が変わってしまうことについて、抵抗感を覚える人もいるかもしれません。確かに、長年同じ分野に打ち込むことで初めて得られる成果もあるでしょう。でも、関心や興味は自分自身でなかなかコントロールできるものでもないと思うのです。

どうしようもなく心惹かれ、そのことを考えるとアイディアがあふれるような何か。青臭いことを言うようですが、そういう“何か”なしには、人はなかなか働けないというのが真実だと思っています。

関心の変化を受け入れることで、新たな事業や解決を生み出した人がたくさんいます。Social Game Infoをご覧のみなさんならご存じの株式会社シシララの安藤武博さんもその1人でしょう。「新しいブレイクスルーを見つけないと今後死ぬ可能性が高い」と、ゲーム(アプリ)業界の未来に警鐘を鳴らし、「ひとつの肩書きだけで仕事する時代は終わりました」という言葉と共に、かのゲーム大手企業をあっさりと退職されてしまった方です(関連記事)。

安藤さんのコラムや発言を通して、ご本人の中でどのように関心事が変化し、それを解釈し、次のアクションとして計画されていったのかを知ることができます。自分の関心の変化を仕事に結びつけるという点において、わたしたちが学ぶべきことの多い、本当に尊敬すべき方だと思います。


ところで、ゲームには「詰み」という状況があることをご存じでしょうか。最近のゲームは設計が親切なのであまり遭遇することはありませんが、これ以上、ゲームをどうにも進めることのできない状況に陥ることがあり、それを「詰み」といいます。『ボンバーマン』で誤ってスタート地点に爆弾を置いてしまうようなケースで、その時点でゲームオーバーが確定してしまいます。

実は、わたしたちのキャリアにおいても「詰み」と呼べる状況が発生しうるのです。ちょっと怖い話ですが、次回は「キャリアの詰み」についてお話ししたいと思います。次回はちゃんと締め切り守ります!(たぶん)
 

著者:原美恵 (TwitterアカウントFacebookアカウント

1984年生まれ。NHN テコラス株式会社所属。 サービス企画、 プロジェクトマネージャーに従事。 ビジネスモデル立案、プロジェクトマネジメント全般が専門。アジャイルやDevOpsによる、“みんなが楽しくなるプロジェクト”を目標にしている。趣味はガンダム研究とゲーム全般。『ポケモンGO』にハマるも未だカビゴンをゲットできずにいる。

イラスト:黒川依 (Twitterアカウント

漫画家。代表作に『ひとり暮らしのOLを描きました』シリーズ(公式サイト)。コミックス最新第2巻は好評発売中。


【バックナンバー】
第2話「30代♀、幅広い業務をお任せされる」

第1話「はじめまして」


 
 
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