Live2Dは、2016年7月2日、日本工学院専門学校 蒲田キャンパスにおいて、イベント「Live2D Creators Conference 『alive 2016』」を開催した。
本イベントは、Live2Dを使った創作活動に関わるクリエーターが集まるイベント。ゲームやアプリ開発者、イラストレーターやアニメーターなど、プロ・アマ問わず幅広い属性の方々が参加。大盛況だった昨年に続き、今年は会場を日本工学院(蒲田校)に移し、500人規模で開催。
本稿では、より利便性が増した「Cubism3.0」と開発中の新技術「Euclid」に関するプレゼンをレポート。
■Cubism 3.0が目指す「一枚絵からの究極の表現」
▲Live2D 笹原正哉氏
はじめにLive2Dの笹原正哉氏が登壇し、最新バージョン「Cubism3.0」を解説した。「Cubism」とは、ラスターデータで準備された原画からLive2Dモデルを構築し動かす、クリエイター向けのソフトウェア。モデリングを行うModeler、モデルデータに演技(アニメ)を加えるAnimatorから構成されている。
▲今回「Cubism3.0」を機に、プロダクトロゴが完成。
▲[マルチビュー対応]:従来の編集画面は、モデリングを行うModeler、モデルデータに演技(アニメ)を加えるAnimatorに分かれていたが、3.0ではひとつのプレビュー画面で全てを管理できるようになるという。全体を見据えた調整が難しい状況だったが、トータル的な管理ができるようになり、アニメーションの動きを考えながらリアルタイムに編集可能になる。
▲[グルー機能の実装]:描画オブジェクト間の繋ぎめは、数ピクセル単位で調整するなど困難な作業だったところ、グルー機能により自動で繋がるようになるという。腕の動きはもちろん、口の動きなども感覚的に調整可能。笹原氏いわく「制作における大幅な時間短縮に繋がるのではないかと期待している」とコメント。
▲[楕円での補間]:従来はイラストを回転させると、線形補間で縮小してしまう仕様だった。3.0では、パラメータで動きを設定させて軌道上を計算し、楕円で間を補間することで縮小を防止。これにより表現の幅も格段に向上するという。
▲[パラメータパレット]:描画オブジェクトの形状をパラメータに登録するパレットも大きく改善予定。具体的には、ドラッグ&ドロップやパラメータのグループ化などの導入が予定されている。そのほか、部分テンプレートやでフォーマの再利用、ベクターラインの描写機能、ペンタブの筆圧を考慮した作業ミスの防止など、単純作業に費やす時間を軽減させる改善を行うという。
また「Cubism3.0」ではUnityとの親和性も向上させて、デザイナーがより開発に近い環境で作業できるようになるとのこと。たとえば、Unityのアニメーションシステム「Mechanim」に正式対応、状態遷移の設定が可能になり、これまで一塊になっていたSDK全体のコンポーネント化を図り、自身にあった環境で作業がしやすくなったのだ。
▲従来のSDKでは専用のキャンバスが必須だったが、3.0ではシーンにドラッグ&ドロップするだけで表示可能に。データの流れでは、デザイナーがAnimatorで作ったモーションをViewerで書き出し、開発側へ渡す。本来アニメーションでは往復作業が頻繁に発生するが、これらがデザイナーだけで完結できるのが大きなメリットに。
ここで「Mechanim」を採用したKLab社の坂中氏が登壇し、採用経緯や今後に期待することを語った。
▲KLab社の坂中氏
「Cubism3.0」は、β版を夏から秋にかけてリリース予定とのこと。最後に笹原氏は、Cubism3.0が描く未来として「“一枚絵からの究極の表現”を理念に掲げて、2D表現のあるべき姿を目指していく」という言葉でプレゼンを締めくくった。
■新技術「Euclid」の全貌が明らかに
▲Live2D 阿曽直貴氏
続いて、Live2Dの阿曽直貴氏が登壇し、現在開発中の新技術「Euclid」のデモに移った。
「Euclid」は、1枚の原画を変形して動かす「Cubism」とは異なり、複数の原画を変形させながらそれぞれをシームレスに連携させることにより、全ての角度や表情において原画に忠実なまま360度の立体表現を実現する技術だ。
映像に登場するのは、「Euclid」で作られた全方位表現が可能なキャラクター・Yui。「描きたいように描き、動かしたいように動かせるなど、Live2Dの基本理念はそのままに、Cubismとは異なる方向性を目指している」と阿曽氏は語った。全方位のために効率化された機能で、既存の3Dと連結されたワークフローが特徴だ。
▲そもそも全方位を実現したEuclidでは、どのようにして3Dのキャラクターが作られるのか。おもに正面、横、後ろの3枚に加えて、その部分の上下を含めた中間の4枚を合わせた7枚で制作されるという。
また、視線が集中しやすく印象に残りやすいキャラクターの顔部分はLive2Dで作成して、体など立体的な部分は3Dで制作するなど、ハイブリッドな制作過程が臨めるのが特徴。Euclidが目指すのは、新しい表現のプラットフォームとして、クリエイターにとってより身近な選択肢に、そして将来的にはキャラクター全身をLive2D化することを目標としている。
さて、ここからはEuclidの機能を個別に紹介。
▲Editor全体は、「Cubism3.0」と同様にModelerとAnimatorを統合している。「Cubismの要望をもとに改善しているので、同ツール利用者にとっては習得しやすい形になっている」と阿曽氏。Editor上で3Dを読み込み、このなかでアニメーションを作成できるようになっている。
▲3D空間上では、前後関係のレイヤーはこのような形に。ジョイントからレイヤーを表示するように、擬似的な立体表現をしている。
▲ジョイントによる髪揺れについても自然な動きを実現。Live2Dで行おうとすると、膨大なパラメータ数になり非常に大変という。元の形状によって硬い表情だけを使い、それに対して後処理の効果として画像のように自然に動かすことができる。
▲そのほかPSDとの連携も充実している。ポリゴン分割をレイヤー単位に出来るほか、PSDのインポート/エクスポートをサポートしてくれており、簡単に連携できるような点が特徴。
▲また、クリエイターの工数を軽減させる機能として、左右対称の操作を一括で行えるミラーリングも欠かせない。パラメータ上でも反転する特徴を持っているため、複数のオブジェクト同士のミラーリングも可能という。
▲そのほか、Eucildが搭載予定の機能について。
阿曽氏は、Euclidが描く未来について「Live2Dによる全方位表現を目指していく。まだまだ試行錯誤が多い状況だが、Live2Dの魅力を最大限引き出すために対応していく」と語り、プレゼンを締めくくった。
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