【CEDEC2015】「そのアカウント活きてる?」…『Dokuro』の開発者が語る公式Twitter運用術 「キャラ設定」や「開発者が呟くライブ感」も重要


2015年8月26日(水)~28日(金)に、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2015」(以下、CEDEC 2015)が開催。

本稿では、2日目(8月27日)に実施されたセッション「そのアカウントは活きているか? ~タイトル公式アカウント、開発者による運用のススメ~」を取材。今やゲーム会社の取り組みとして、プラットフォーム問わず、Twitterを駆使したお知らせやユーザーとの交流は必須。今回は、ゲームアーツの開発者による人気作『Dokuro』の公式Twitterアカウントを運用して気付いた配慮やノウハウについて講演してくれた。

 

■タイトル公式Twitterの運用術…準備・利点・弱点


登壇したのは、株式会社ゲームアーツの開発部長である風間紀明氏。同氏は、1996年よりテクモ株式会社 Team Ninja にてプランナとしてゲーム開発に携わり、これまで『Dead or Alive』シリーズや『Ninja Gaiden』シリーズ等のプロジェクトに参加。その後、2007年より株式会社ゲームアーツにてディレクターとして『TMNT Smash-Up』『Dokuro』を制作してきた。

そして、今回のセッションのテーマタイトルである『Dokuro』は、チョークタッチで描かれた、絵本のような世界を舞台に道中に仕掛けられた様々なギミックを解き明かしながら、魔王城に捕らわれた「姫」を助け出すギミックアクションゲーム。

2012年7月よりPS Vita向けにサービスを開始以降、独特な世界観とユニークなキャラクターたちが繰り広げる完全オリジナルストーリーで、多くの人から支持を集めた作品だ。米国IGNで「ベスト・PS Vita・パズルゲーム」をはじめ、複数のゲームレビューメディアから「オリジナルゲーム・オブ・ザ・イヤー2012」や「ベストプラットフォーマー」などの賞を受賞した。

また、2013年12月よりスマートフォン版(売り切り型)もリリースし、わずか1日でApp Storeのゲームカテゴリー有料ランキングで首位を獲得するなど、各方面で話題に。なお、『Dokuro』はPS Vita版の発売から今年の7月で3周年を迎えた。「CEDEC」の参加理由として、そのノウハウを共有するタイミングだと考え、今回のセッションに至ったという。

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▲現在『Dokuro』の公式Twitterのフォロワー数は4000。「フォロワー数は少ないですが…」と風間氏が前置きしながらも、コンシューマ版(PS Vita)・売り切り型のスマホゲームのアカウントで、これほどの数はすごいほう。また、今回は売り切り型タイトルの運用話であり、F2P型とは「勝手が違います」ということにも断りを入れてくれた。


▲講演の冒頭には、風間氏がセッション受講者に対して、公式Twitterの運用に関する4つの質問を行った。本来、公式Twitterは広報の人が運用しているようにも思えるが、意外と開発者自らが運用している人が多かった。

昨今、SNSを活用したタイトル告知は、もはや常識。なかでも広報のいる会社では、おもに広報が公式のSNSの運用を担当するケースがほとんど。ただ、風間氏の場合は、開発者自らが運用することに。その経緯とは、「単純に広報の人が忙しそうで、ユーザーと直接対話できるのは面白うだと思ったから」と風間氏。しかし、実際には運用の大変さや重要に後から気付いたという。

続いて、公式Twitterを運用するうえで、準備すべきことについて解説。まずは、「どんなキャラでやるか」。『Dokuro』の公式Twitterは、主人公のDokuroに扮してツイートなどをしているが、そもそもゲーム内ではDokuroは喋らない。ただアカウント作って情報を呟いても他のツイートで生まれてしまう…「何かフックがないと」、そう考えた風間氏はアクが強いキャラとして、基本的にひらがなでツイートする幼いキャラに決定。

しかし、延々と幼い呟きしても、ユーザーが飽きてしまったり、ましてやお詫び文などの真面目なツイートの際は、逆に反感を買ってしまう心配も。そこで、Dokuroがヒーローに変身できる、ゲーム内の特徴的なシステムを活用して、真面目なツイートの際はヒーローに切り替え、漢字も使って普通に告知する二面性を持たせたとのこと。

そのほか準備すへきことに関して、ツイートを生活の一部にする心構えを持つということ。朝起きたときや通勤中、お昼休み、イベント、寝る前など、とりあえず手が空いたらTwitterを見る生活にすることが大事。一見、大変なようにも思えるが、「慣れると楽しい。変に割り切らず、飛び込んでしまうのがいい」と言葉を添えた。
 

開発チーム自らが運用することに対する、利点と弱点についても説明。前述したように、公式SNSは広報が担うことが多く、開発者自らが情報を呟くことは少ない。もちろん開発チームが運用するのは、ゲーム開発の根幹にも関わってくるので、負担は相当大きい。

しかし、同時にゲーム開発の最前線に立っていることもあり、新しい情報などユーザーはダイレクトに開発の状況を感じ取れるメリットがあるという。もちろん、ついつい呟いてはいけない情報を公開するなど、いわゆる”やらかし事例”も多々発生するのも事実のようだ。

風間氏は、やらかし事例のひとつとして、過去に他のゲームクリエイターたちと一緒に焼肉を食べに行ったことを『Dokuro』の公式Twitterで呟いたところ、ユーザーから叱られたことを語った。せっかくユーザーはDokuroのキャラクターの呟きとして楽しみにしていたのに、世界観を壊されてしまったのだろう。これに関して風間氏は「非常に申し訳なかった」と振り返った。
 

▲失敗することもあるが、開発者がユーザーと直接触れ合うことに関して、心の底から楽しいと語ってくれた。

また、エゴサーチも積極的に行ったようだ。要するに、Twitter上で『Dokuro』に関する呟きしているユーザーに対して絡んでいくということ。「開発者なら、アプリの問題点を拾う意味でも」と風間氏。なお、ネガティブな意見はスルーしていく。

ちなみに、実際にこのエゴサーチをしていくと、有料アプリならではの意見「やったことないけど、気になる…」というツイートを多く見かけることに気付く。「気になる」と呟いていることで、間違いなく購入してもらえる潜在ユーザーであることも分かるが、反面、「気になる」は”購入した気にもなれる”魔法のキーワードと風間氏は語る。

というのも、本セッションがCEDEC公式サイトで発表されたときも「気になる」と呟いた人がいたようで、実際にそれを呟いた人が会場にいるかを風間氏が確認したところ、やっぱり来ていなかった……。まさに「気になる」はその気になれる魔法の言葉、会場でそのことを体現してくれた。
 

▲「気になる」と購入を迷っているユーザーに対しては、直接話をかけてみるのもひとつの手。

このほか、辛辣なツイートやDM(ダイレクトメッセージ)を見ても、心を落ち着かせてスルーすることが大事。もちろん、指摘された内容は真摯に受け止め、落としどころがあるコメントには返信するという。開発者自らが運用する意義はここにもあり、直接「動かない」「分かりづらい」という現状起こっている問題を迅速に拾い上げることができるのだ。

たとえば、iOS8の公開とともに不具合が発生した際に、原因を調べたら直せることに気付くと、すかさず公式Twitterで告知してあげる。また、バグだと思い間違えてデータを消してしまわないように、都度ツイートでデータを消さないように促すなど、細かい配慮は開発者が運用するからこそできる要素でもあろう。
 

雑談の重要性についても触れた。「フォローしていて楽しいアカウントを目指す」と語る風間氏の場合は、なんと他社製品であっても面白そうなゲームは言及していくことを意識したようだ。

また、たいていのTwitterクライアントには、人気のハッシュタグやRTランキング、最新ニュースなどの表示機能があるので、そこからアカウントとマッチしたものを選び言及するのがベスト。もちろん呟いた内容には、『Dokuro』のハッシュタグを付けて、雑談からはじまり、最終的に自社製品の話に(いやらしくないように)繋げたりすることも大事。
 

なお、アカウント立ち上げたばかりは、積極的にフォローバックもしていたとのこと。ただ途中からフォロー数の上限が達して、今ではちょくちょくと増やすだけにしている。やはり公式アカウントにフォローバックされることで、ユーザーにとっても親近感に繋がるのかもしれない。

一般的にツイートのベストタイミングは23時と言われるが、風間氏いわく「効果は正直分からない」。これよりも昼休みの直前や通勤通学など、スマホを開くタイミングのほうが反応が良かったという。

最後に風間氏は「公式Twitterは、人間力と、ウィットと、誠実さと、あざとさその他もろもろの総合力が要求される戦場です。これからやられる人は心してください」とエールをおくった。
 
(取材・文:編集部  原孝則)


■『Dokuro』

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