東映アニメ決算説明会 海外売上比率の伸びが原価率改善もたらす 「ワンピース」関連は出し過ぎで一巡感 海外公開先行型作品も検討中


東映アニメーション<4816>は、10月31日、東京都内で2015年3月期第2四半期の決算説明会を開催した(第2四半期決算発表は10月30日)。発表された決算は、10月28日に発表された業績予想の上方修正(関連記事)の通り、営業利益、経常利益、純利益がいずれも従来の減益予想から一転増益に転じている。
 
決算説明会では、第2四半期実績の説明を中心とした部分を吉谷敏取締役経営戦略部長(写真:1番左)が説明、下期や中長期の展望を中心とした部分を高木勝裕社長(写真:右から2人目)が説明した。説明会全体の印象として、今後は海外展開を成長の軸足としていきたい同社の考えが見えてきた。
  

 ■原価率の改善が第2四半期の増益につながる
 
まずは第2四半期の実績を見てみると、同社の発表した第2四半期決算は、売上高は前年同期比9.7%減の143億円と減収にとどまったものの、営業利益は同4.9%増19億円、経常利益は同2.3%増の21億円、純利益は同5.7%増の13億円と増益を確保した。これは主に原価率の改善によるところが大きい。
 
 
 
では、その原価率改善の要因は何か。要因は大きく2つが挙げられ、1つは前期に公開した劇場アニメ「キャプテンハーロック」の関連原価が前期は大きかったことだという。また、もう1つは、原価率の高い劇場アニメ・商品販売の売り上げが減った一方で、原価率の低い海外売り上げが伸びたこと。海外売上比率は前年同期の14.4%から23.9%に上昇し、これにより、原価率は前年同期の72.6%から67.5%に改善したという。
 
 

 
■映像製作・販売事業、版権事業とも海外の伸び目立つ
 
原価率の改善に、セグメント別売り上げの動向や、海外売上比率の上昇が影響しているということで、次はセグメント別の動向を見てみると、確かに海外が伸びていることが明確に見えてくる。
 
まずは映像製作・販売事業だが、こちらは劇場アニメとコンテンツが大きく減少、逆にテレビアニメと海外映像が大きく伸びている。注目の海外映像についてだが、これは中国向け複数作品大口映像配信権の販売好調などが大きく寄与している。この中国向け配信権については、会社側によると海賊版回避という点からも積極的に推し進めているようだ。
 
 
 
ほか、版権事業、商品販売事業、その他事業も見てみると、国内版権と商品販売が減収となっている。これは主に「ワンピース」関連の落ち込みに起因する。ただ、その一方、海外版権については「ドラゴンボール」とともに「ワンピース」も中国向けのアプリゲームの契約で大きく貢献している。
 
 
 
海外事業の状況にスポットを当てたのが下のグラフだ。詳しい数字は非開示ということでざっくりした印象になってしまうが、おおむね右肩上がりのトレンドが続いている。多少の凸凹が生じるのは大口案件の一括計上の影響によるもの。そうした中でも今期は第1四半期期間(4~6月)、第2四半期期間(7~9月)ともアジアの伸びが目立つが、これは中国市場への積極展開によるものだ。ちなみに海外売上比率については「(今までは)10%なかったが、今期は20%くらいになる。将来的には半々くらいになれれば」(高木社長)とのこと。
 
 
 

■「ワンピース」関連は出し過ぎで一巡感
 
次に国内版権事業に目を移してみよう。「ワンピース」関連の落ち込みが減収の要因となっているが、これについては「国内のワンピースは2年くらい前が一番好調だった。玩具などの出し過ぎで一巡感が出ている。あまりにもいろいろ展開し過ぎたのは反省している」(高木社長)とのこと。ただ一口に「ワンピース」の版権といっても、玩具は依然として苦戦が続いているものの、SNS・アプリ・家庭用ゲームについては落ち込みに歯止めが掛かっているようだ。
 
 
 

■今期予想は上方修正も前期比では依然減収減益
 
続いて今3月期通期の見通しを見てみると、今期は売上高270億円(前期比13.0%減)、営業利益32億円(同11.2%減)、経常利益35億円(同11.2%減)、当期純利益23億円(同1.4%減)と減収減益の見通し。これは10月28日発表の修正予想に基づくもので、従来予想(売上高260億円、営業利益24億円、経常利益27億円、当期純利益17億円)からは上方修正されている。
 
ただ、これを下期だけで見ると、下期予想に上乗せされたのは売上高で5億円、営業利益で1億円と上期の修正実績と比較するとやや保守的な印象だ。会社側も「控えめ」としており、「今後の業績動向を見て特別配当の実施も」と含みを残している。
 
 
 

■国内アプリゲーム2本は期待の新タイトル
 
下期の主な展開は下記の資料の通り。家庭用ゲーム・アプリゲームへの注力が海外向けアプリゲームを含めて目立つ。国内向けアプリゲームでは『ワンピース ダンスバトル』(2014年内)、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』(今冬)の2本(配信はともにバンダイナムコゲームス)をiOS版、Android版で投入する予定で、会社側は『ONE PIECE トレジャークルーズ』に続く期待の新規タイトルと位置付けている。
 
 
 

■海外公開先行型作品も検討中
 
今後の海外展開については、「キャプテンハーロック」の成功を生かし、映像作品の新企画・製作が進行している。海外公開先行型の劇場作品も企画を検討中であるほか、国によって人気のある作品を先行させて公開する戦略も考えているとのこと。
 
また、アジア市場を取り込むために、日本で成功したビジネスモデルをアジア地域でも水平展開する「ボーダレス戦略」も推進。既に台湾や韓国で、「ワンピース麦わらストア」や「ONE PIECE展」などが成功を収めたとしている。
 

 ■成長のカギはやはり海外展開
 
説明会を通して感じたのは、大型IP(知的財産)タイトルを持っているものの、その従来通りの国内展開だけでは大きな成長は難しいという印象だ。そこで出てくる切り口がやはり海外展開ということになるのだろう。実際、同社の海外売上比率が50%となれば、収益規模は大きく拡大することになるだろう。
 
また、当たり外れの大きい世界ではあるが、新たなIPタイトル、オリジナル作品の育成も課題と言えそう。今回の説明会の最後には、11月15日劇場公開予定の新作「楽園追放 Expelled from Paradise」の映像を公開。同作は「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄氏が脚本、「機動戦士ガンダムOO」の水島精二氏が監督を務めたSFアニメで、期待のオリジナル作品と位置付けられているようだ。
東映アニメーション株式会社
http://corp.toei-anim.co.jp/

会社情報

会社名
東映アニメーション株式会社
設立
1948年1月
代表者
代表取締役会長 森下 孝三/代表取締役社長 高木 勝裕
決算期
3月
直近業績
売上高874億5700万円、営業利益286億6900万円、経常利益297億9100万円、最終利益209億円(2023年3月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
4816
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