クルーズ決算説明会 業績と市場環境「読み切れない」が「戦えない感じではない」…iOS版『ACR DRIFT』のオンライン対戦機能は開発完了

クルーズ<2138>は5月12日、2014年3月期通期の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開いた。通期の売上高は前の期比68%増の233億円、営業利益は同2.2倍の42億円と大幅な増収増益を達成。もっとも、第4四半期(4Q、1~3月)を見ると、ソーシャルゲーム事業の鈍化やEC(ネット通販)事業の季節的な落ち込みを背景に、前四半期(3Q、13年10~12月)比で減収に転じている(関連記事)。

ゲーム事業の変動が読み切れないため、15年3月期の業績予想を非開示とした。小渕宏二社長は「予想を構成するタイトルひとつ、期中に出るか出ないかで予想を修正する可能性があるのは、不確実で不誠実」と説明。ゲームの成否による業績変動や市場環境について「読み切れない」と経営の難しさを指摘した。一方、「『モンスターエッグアイランド』の手ごたえを考慮すると、戦えない感じではない」とも述べた。

なお、説明会では、スマートフォン向けレーシングゲームアプリ『ACR DRIFT』のiOS版について、オンライン対戦機能の開発が完了しており、審査が終わり次第リリースすることを明らかにした。(以下、かぎ括弧内は小渕社長の発言)
 
 

■4Qは減収増益:ゲーム・ECともに売上減、費用減少で利益は改善


4Qの売上高は前四半期比14%減の52億円。ブラウザゲームの業績が落ち込んだほか、洋服を売りにくい2月を含む四半期だったため、EC事業「SHOPLIST.com」の業績も減少した。

事業別の売上高は、コンテンツ(ソーシャルゲーム)事業が11%減の35億円、コマース(EC)事業が20%減の16億円だった。
 

一方、4Qの営業利益は同21%増の9.73億円と改善した。広告宣伝費の効率化で、費用が減少した。
 
 

■今期の業績予想を非開示…タイトルリリースによる変動「読み切れない」


2014年3月期(前期)通期の業績は、ほぼ会社予想通りに着地した。通年でみると、ブラウザゲームの伸び悩みを、「SHOPLIST.com」の成長が補った格好となった。業績の成長を受けて、配当も前の期から増やす。(写真は説明会での小渕社長)

一方、15年3月期(今期)の業績予想を非開示とした。1Q(4~6月)の予想も開示しなかった。

小渕社長は非開示の理由として、「タイトルの成否で業績が大きく変動する業態となっている。予想を構成するタイトルひとつ、出るか出ないかで売上予想を修正する可能性があるのは、不確実で不誠実。コスト面でも、広告宣伝費の計上タイミングが期ずれする可能性がある」と指摘。「上場して7年間、クルーズは売上高や営業利益の下方修正をしてこなかったが、さすがに今回は読み切れない」と語った。

前期4Qと比べた1Qの方向感について問われると、「具体的なことは言えないが、肌感覚として、売上はそれほど大きく落ち込むとは考えていない。利益は読み切れない」と述べた。
 

■市場環境「戦えない感じではない」…iOS版『ACR DRIFT』はオンライン対戦機能の開発完了


説明会会場からは、ブラウザゲームを主力とする同業他社の業績見通しが芳しくないこともあって、ソーシャル/モバイルゲーム市場の状況をどう見るか、という質問が出てきた。

小渕社長は「市場環境が追い風か向かい風かは、正直分からない、というのが本音」と漏らしつつ、「ブラウザは手を抜かず、新たに創出されたネイティブアプリ市場で売上を積み上げていく」と述べた。「開発者の採用も順調で、(ネイティブアプリである)『モンスターエッグアイランド』の手ごたえを含めると、戦えない感じではない」とのこと。

なお、iOS版『ACR DRIFT』のオンライン対戦機能の実装が完了しており、ストアの審査が終了次第リリースすると明らかにした。
 

■EC事業:「このサイトに行けば何かある」というブランディングに成功


前期のEC事業の業績については「想定より良かった印象」と語った。

「SHOPLIST.com」の強みは何かと問うと、「このサイトに行けば何かある、と記憶してもらえるブランディングができたこと」と述べた。また「(余計な商品を捨てて)ファストファションに特化したことで成長できた。特化した上での品ぞろえも重要。特化によるブランディングと記憶が成功の要因だと考えている。同業他社と比べてプロモーション費用も多くかけたと思う」と振り返った。

本を探すなら「Amazon」、というように、ファストファッションを探すなら「SHOPLIST」というイメージ付けができたということだ。

今期のEC事業の方針については、「重要と考えている指標は、品ぞろえ、プロモーション、物流の3つだけ。この3点を強化していくが、今期のテーマは物流速度。ユーザーは早く届くのが当たり前と感じている」と述べた。もっとも「土地や倉庫など物流拠点やハードウェアに設備投資をするわけではなく、予約販売やマーケティングに力を入れていく」とのこと。
 

■他社IPタイトルのリリース予定は「ノーコメント」


全体の人員は3Qに比べて13人減ったが、積極採用中のネイティブ開発者は増員しているという。
 

今後の新作ゲームのリリース予定本数については、「ブラウザよりもネイティブの方が多いというイメージ」とのこと。

他社IP(知的財産)タイトルのリリース予定については「ノーコメント」としつつ、「経営の目線でみると、他社IPタイトルは自社でコントロールできない面も多く、業績も読みにくい。IPを狙うなという指示を出してはいないし、(他社IPタイトルと自社オリジナルタイトルの)両方を狙うべきだが、自社オリジナルの方が業績は想像しやすい」と補足した。
 

■「ネイティブ」「M&A」「新規事業」で成長狙う


今後の成長に向けて、「ネイティブゲーム」「M&A(合併・買収)や資本提携」「新規事業」の強化を進める方針だ。

新規事業については、 「あくまでもゲームが主軸だが、企業規模が大きくなったこともあり、経営安定化のため新規事業で新たな収益源の確保を目指す」と説明。M&Aの対象については「本業のゲームかECの分野に投資する。ただ、EC事業は自力成長が見込めるので、どちらかというとゲーム事業に(資金を)使っていきたい」と述べた。


■関連リンク

決算説明会資料
クルーズ株式会社
http://crooz.co.jp/

会社情報

会社名
クルーズ株式会社
設立
2001年5月
代表者
代表取締役社長 小渕 宏二
決算期
3月
直近業績
売上高140億円、営業利益6億4400万円、経常利益6億2800万円、最終利益2億5400万円(2023年3月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
2138
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